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149 シヌタプカびととキムントの娘(カッコン鳥の兜)

あらすじ:奥田統己

 私はどうやって生まれたものか大きな家の中に一人でいて、毎朝毎晩上座の窓のところに食べ物が常套の食器に入れて置かれているのでそれを食べ、家の中で遊びまわって暮らしていた。宝壇のところには古い神の鎧が生きている人のように金属の笠をかぶり、神の太刀を差しているのを見ていた。

 だんだん私は大きくなるとどこかに行けば人間に会えるのだろうと思っていて、ある日これだけもう大きくなったのだから出かけてみようと思って鎧を身に着け、カッコウの飾りのついた金属の笠をかぶり太刀と槍を持って神様に祈って家の外に出た。

 何とまあ美しい村なのか、川上は遠くて高くそびえ、河口のほうは近くて盛り上がって見える。川に沿って遡っていき、風に乗って低い木は木の上を通り高い木は木の横を通って行くとキムント村という村の湖のそばに行った。

 そこでは女の人が歌を歌っている。歌声を聴くと「私はキムント村の娘で、男2人女2人の兄弟姉妹なのだ。シンヌタプカの勇者の噂は高いけれど、攻めて行って殺してやろう。そうすれば私たちの勇敢な話はますます高まるだろう。」と歌っているので、みると倒れ木のそばに座って胸を叩きながら歌っている。私は腹を立てて隠れて近づいていってそばに行ってその女を捕まえた。「お前は誰だ」と聞いたら「私はキムントの女で女2人の姉だ。神の中も土の中も通す巫力を持っているのだ」という。私は腹を立てて切り捨てて遠くの山の中に投げ捨てた。

 それから私はその女の着るものを身につけ頭に巻く布も巻いてその女に変装し、自分の鎧を背負って、湖のそばを歩きながら「兄さん、湖を渡してください」と女の声で歌っていると、山を削った細い道をくだり舟に乗ってキムントの兄がやってきたので「こうやってシンヌタプカの勇者を殺して鎧を奪ったのだよ」というと男は「よくやった」といって湖を渡してくれた。それから細い道をたどって山を登っていくと大きな家があった。

 そこで「シヌタプカの勇者を殺して鎧を奪ったのだよ」と言って家に入っていくと、みんな喜んで「シンヌタプカの半分神で半分人間の勇者をあなたは巫力が強いので倒したのだ、明日はシンヌタプカに行って宝を奪ってこよう」といい、カムイノミをして歌ったり踊ったりしている。私も女に交じって踊りを踊っていた。

 そのうち私が外に出たいと行って外に出ると、家の左座側に小さな家があるので窓から覗いてみると若い女が座っている。そこでいったん後戻りして改めてはじめて入ってきたふりをして入っていき、上座に座ると娘はこういった。「シンヌタプカの勇者よ、あなたが来るのも姉を殺すのも私は見ていましたし、姉のふりをして兄たちをだますのも全部見ていました。私は家族や仲間がいない人と戦うことはできないので、シンヌタプカの神であるあなたをお助けします。」と言った。そして娘はご飯をたいて私に差し出したので、私は一杯めをたいらげてしまい、二杯めは自分で二口三口それを食べて娘に渡すと娘はうやうやしく受け取って食べた。これで私たちは夫婦になったのだ。

 それから私は外へ出てまた家の中に入って踊りを踊り、やがて着ている服を脱ぎ捨てて鎧を身に着けてそれから酒を仕切っている男のところへ行き、酒の樽を持ち上げてそのまま飲んでから男の頭にかぶせた。それから男たちに刀で斬りつけると「驚いた、女だと思っていたらシンヌタプカの半分神で半分人間の勇者が私たちの妹を殺して変装していたのだ。」と言いながら大騒ぎしている。「私は何も悪い心を持っていないのにお前たちは戦いを仕掛けるつもりなのか」といい、切りつけて窓から逃げるやつも切りつけ戸から逃げるやつも切りつけた。

 家の中に敵がいなくなったので屋根の煙出しの穴から外へ出てみると悪者たちは虫がうごめくみたいに集まっている。キムントの年上の男は「たった一人なのだ、斬り殺してしまえ」と号令をかけている。そこで私が戦っていると、例の娘も私のそばに来て私を助けてくれる。そこへ今度はポンモシリの女だという娘もやってきて私といっしょに戦ってくれた。そうしてひと月だかふた月だか男は男の戦いをし、女は女の戦いをしていた。

(ここから自叙者が娘に変わる。)

そのうちシンヌタプカの勇者はどこへ連れて行かれたのかわからなくなり、女の私たちは彼を捜し回った。すると、どこからかカッコウが鳴いている声が聴こえてくるので、行ってみると地下のポクナモシリまで行った。そこには大きな沼地があり、そこに生えている折れた木にシンヌタプカの神の勇者の金属の笠がかぶせてあった。その笠のカッコウの飾りがつけてあるのが鳴いているのを私たちは聴いて地下までやってきたのだ。

 それでも勇者は見つからないので私たちは笠と鎧を持ってまた地上に戻り、あたりの村を探しまわった。チワシペッの川を登って行くと滝があり、そのそばに小さな砂の入り江があるのでそこに私たちは小さな小屋を作って火を焚いて泊まることにした。すると滝の落ちる音の中から神の女の人の声がした。

「シンヌタプカの勇者は、裸にされてこのチワシペッの村の真ん中の大きな館に捕われて金属の綱で縛りつけられている。あなたたちが行ってもどうしようもないので、このまま帰りなさい。」と、水の神様か誰かが話しているのだ。それでも私は「このまま帰ることができるだろうか」と思い、ポンモシリの女も着いてくるという。それで、どういうわけかときどき地震のように地面が揺れるなか、私たちはそこで泊まった。

 朝になって私たちはどうにか崖を登って上に登った。見ると美しい村が広がっている。そこに立っている館に這って近づいていって窓のすだれの隙間から中を覗くと、大きな人たちが集まっている。シンヌタプカの神の勇者がしばりつけられている下には大きな火が焚かれ湯の入った鍋がかけてあって、そのお湯が跳ねてかかると勇者が暴れて家も地面も揺れるのをゆうべ私たちは感じていたのだった。

 そこで私はポンモシリの女に「私といっしょに家の中に入るか」と聞くと彼女は「私は入れない、戸口で待っていて出てくるやつらの首を斬ろう。あなたは中に入って勇者を連れ出しなさい」という。

 そこで私が中を覗くと、上座には一人の男が神の言葉の書いてある帳面を読んで「この勇者を殺してはいけない、神の子孫なので国も村も滅んでしまうと帳面に書いてある」と、まわりにいるおおぜいの男に話している。しかし男たちは「噂の高いやつだから殺してしまおう、どうして生かしておくのだ」と言っている。

 そこで私たちは二人で屋根の上に上がり、私は煙出しの窓から入って勇者の綱を切り、また煙出しの窓から外に出た。それを見つけて追ってくるものはポンモシリの娘が斬り殺し、そのあいだに私は半死半生の勇者を連れて入り江の小さい家までやってきた。勇者に着物を着せてあげ、薬を煎じてやけどをした背中に塗ったり魔法の扇であおいだり、薬を飲ませたりして介抱した。
 そうしているうちに二、三日してから勇者は気づいて「どうしたのだろう」というのでこれまでの事情を説明し、さらに手当てしていると食事もでき起き上がることもできるようになった。ポンモシリの娘が一人で戦っているのはお腹もすくだろうしかわいそうに思ったけれども勇者はまだ一人で起きることもできないので、私は毎日介抱していた。やがて勇者が少しずつ起きたり立ったり話したりでき、「あなたのおかげで私は助かった、ポンモシリの娘を助けに行きなさい」と言う。それでも私はまだまだと思ってずっと勇者の介抱をしていた。

 ようやく勇者も元気になったので、彼は再び鎧を身に着け、私といっしょに崖を登ってチワシペッの館に再び向かった。こっそり近づいてみると家の中では例の男が「シンヌタプカの勇者を殺すことはできないのだよ」と言っているが他の男たちは「たった一人をどうして殺せないものか」と言っている。そこでいったん後戻りしてから改めてはじめてやってきたふりをして家の中に入り、そこで戦いを始めた。私は家の外で女たちと戦った。

 そのうち悪者たちは周囲の村から、羽毛で作った勇者を繰り出す老婆、裸の人間を繰り出す老婆、綿の勇者を繰り出す老婆を加勢に頼んできた。それでもとうとう私たちは加勢の勇者たちもみな殺してしまい、「シンヌタプカの勇者を殺すな」と言っていた男だけは生かしてあとはみんな殺して戦いを終えた。



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