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91.子どものいない夫婦と入り江の向こうの病人

あらすじ:高橋靖以

 私はまことの長者だった。私の奥さんも働き者で、何不自由なく暮らしていた。ただ不足に思うのは子供がいないことだった。

 あるとき、隣の川筋の村の村長の奥さんが病にかかり、ずっと寝たきりになっていて、お祈りをしてもよくならないという噂を聞いた。

 いつかそこへ訪ねて行こうと思いながらいたが、あるとき出かける決意をして奥さんにそのことを言い、隣の川筋の村へ出かけた。夕方頃に、私は隣の川筋の村の真中の大きな家に到着した。

 家の前で声を出すと、若い女が出てきてまた中に入り、「見知らぬ人が来ています」と言った。すると中で「招き入れなさい」という声がした。私は外で装束をとき、家の中に入った。

 座の真中に座って見ると、私より年長の長者がいた。私たちは挨拶を交わした。私は長者の奥さんが病気であると聞いて訪ねてきたのだと言うと、長者は私に感謝し拝礼した。私はこの家に泊まり奥さんを見ると寝たきりの様子だった。若い女が炊事をして私たちは夕食をとり話をした。その夜、私は神窓の下に寝床を敷いてもらいそこで寝た。すると夢の中に神のような人が出てきてこのように言った。

 「人間の長者、話すからよく聞きなさい。この家の奥さんが病気であるのは、家を建てたときにニワトコ(ソコニ)という木が屋根に生え、この家の奥さんの運が悪くなったからだ。神々が訪ねて来てもニワトコが生えているので、この家に立ち寄ることができない。

 そのニワトコを抜き取って捨てると、この奥さんは生きのびることができるだろう。」

 翌朝起きて夢で見たことを話すと村長は「屋根にニワトコがあるのを見ていたが何とも思わずにいた」と言った。家の外に出て見ると本当に大きなニワトコが生えていた。私は屋根に上がりニワトコを抜き取った。そしてそれを村の下手に捨てた。それから私たちは神に祈った。

 家の奥さんの背中を打ちお祓いをして、ニ、三日すると家の奥さんは座って食事をするようになった。村長は「よその村の長者のおかげで私の奥さんは生きのびることができた」と言い私に感謝した。私は少しばかりの宝物を受け取り自分の家に帰った。家に帰って家の奥さんにも話をして聞かせた。

 それからは隣の川筋の村の村長とも親しく往き来した。隣の川筋の村の村長にも子供が生まれ、私のところにも子供が生まれた。そして何不自由なく暮らした。そして、「家の上に木を生やさないようにしなさい」と子供たちに言い聞かせた。そして私は年老いた、と隣の川筋の人だかが物語った。



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