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88.六つのいろりのある家にすむ悪党

あらすじ:北原次郎太

 イアラモイサム村の村長の家には6つの囲炉裏があり、村長夫婦はその一番上手に座っていばり散らしているそうだ。村の人々を使用人のようにこき使って、いうことを聞かなければ髪を削いだり、髭を切らせたりしているそうだ。また、どこかから立派な人が来ると、人の生首を大鍋に煮て、度胸があるなら食べてみろと言いがかりをつけ、それが食べられないと責め殺すらしい。

 そういう噂を聞いて、村人が気の毒になり様子を見に行くことにした。村長の家の前につくと、大勢の人々が出入りして働かされていた。家の中に通されたので「山仕事をしていて道に迷ってしまいました」と言った。いろいろと話しこんでいるうちに女の人たちが食事の支度を始めたが、聞いていた通り子供のように髪を剃られている者が何人もいた。そのうち村長が「いつものように首を出しなさい」と言いつけた。すると驚くほど大きな鍋に湯が沸かされた。次に、なにか大きなものを背負ってきたので見てみると、それは切り落とされた人間の首だった。それを茹で始めるのであっけにとられていると、やがて首が煮上がった。大きなお膳に盛らせて私に勧めながら「初めてお目にかかったので一つ度胸試しをしましょう。この首を削って食べることができたら仲間になりましょう。できなければ殺してしまいます。これまでもそのようにしてきたのです。さあさあどうぞ」といった。びっくりしながらそれを受け取って手前においた。そして、少し削って「さあさあ、私に食べさせたくてお出しになったのなら先ずさきにお召し上がりください。あなたの言いだしたことですから、先に少し食べてそれから私に下さるのであれば食べましょう」といった。すると、村長は食べようとしないので「食べないのであればあなたの首を斬り落としますよ。あなたもいままでそうしてきたというのですから、あならが食べないのなら私も同じようにします」と強い口調でいった。それでも村長が食べないで私に突き返そうとしてくるので、チャランケ(談判)をしかけた。「いったいこれが人間のやることか。カムイに罰を受けるような所業をしてきて、村人をも苦しめ続けているというから様子を見に来たのだ。このような振る舞い、カムイの御前でこらしめてやる」といいながら、押さえつけた。悪い村長が刀を抜いたので、私も刀を抜いて、切っ先に悪者をとらえて懲らしめた。

 家の人たちは逃げて、部屋の隅に隠れてなりゆきを見ている。その村長の頭を押さえつけて炉ぶちの所で懲らしめた。その妻も懲らしめてやった。すると「私達が悪かったのでどうか殺さないでくれ、生かして償わせてくれ」という。しかし、私は許さずに村長の髪を子供のように剃り落とし、髭も子供の顎のように切り落としてやった。妻も懲らしめて髪を短く切り落とした。それから家にいる子供や女たちには「村長は懲らしめてやったから、自分の家がある者は帰れ」と言いわたした。夜が開けると、人々は銘々物を運び出し、家のある者は家へ帰ったので、大きな家はすっかり空き家のようになった。 悪い村長は「何とか生かしてくれ」と言い続けているので「これからまたこのような悪い心を起こせば、またやってきて懲らしめるから」と言い含めて帰った、とポンモシリのアイヌが語った。



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