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84.ハチの姉妹と雷神

あらすじ:遠藤志保

 わたしは、姉に育てられていました。姉は、針仕事ばかりをしています。わたしも針仕事をしたくなり、やらせてもらいました。はじめは、しわくちゃの袋ばかり縫っていたので、姉さんは鼻をかんで外に捨ててしまいましたが、毎日針仕事をしているうちに、上手になって、姉さんにもほめられました。

 ある日、どこからか神がやって来る音が聞こえました。そして、男の人が入ってきて、

「あなたの妹さんは、心も顔かたちもすばらしいので、わたしにください」

と言います。姉さんは断りましたが、言い負かされてしまいました。わたしは、泣きながらゴザ袋に荷物を入れ、そのまま男の人に連れて行かれました。

 雲の上を飛んで、神の国に着きました。大きな山城があります。中に入ると、6人の男がいました。

 わたしは、2日も3日も泣いてばかりいて起き上がりませんでした。そこで、

「この人間の女が、われわれの言うことを聞かないのなら、ずっと遠くの山にいるサクマンダチ・マタマンダチのところに行かせよう」

と言われました。

 そこで、わたしは荷物を背負って、川を上流に行きます。夕方になると、大きな家があります。すると、外に若い神の女性が出て来て、美しい家の中に入れてくれました。そして、その晩は泊まらせてもらい、翌日になると神の女性は、

「わたしはサクマンダチ女神です。わたしが着がえて踊りますが、あなたは我慢するのですよ」

と言いました。そして、女神さまは、神の小袖を着て、巫力の強い耳飾りをつけ、灼熱の日ざしが描かれた扇を持って踊ります。すると、暑くなって息をするのも苦しいくらいです。扇であおぐと、灼熱の日ざしがあらわれます。人間の村を見れば、そのせいで干上がっています。わたし自身も死にそうでしたが、炉ぶちにしっかりつかまってこらえていました。6日6晩そうしたあげく、ようやく女神さまは衣装を脱ぎ、「よくがんばったわね」と、別の扇であおいで、わたしの手当てをしてくれました。

「今度は、マタマンダチ女神のところにいくと、今度は雹や氷で攻められるから、しっかり神に祈っていなさい」

と言われ、わたしはさらに山の方へいきました。そして、大きな金の家に着きました。そして、美しい若い女神さまが中に入れて、泊まらせてくれました。

 翌日、わたしに「心をしっかり持ってね」と言うと、女神さまは雹が描かれた小袖を着て、雹の描かれた扇を取り出し、巫力の強い耳飾りをして、踊りだしました。踊りながら、扇であおぐと、大風とともに大小の雹が落ちてきて、わたしは死にそうになりました。炉辺をしっかりつかんで、こらえていました。

 6日6晩、そうしていますと、女神さまは踊りをやめ、「よくがんばって生きのびたわね」と衣装をしまい、わたしの体の傷の手当てをしてくれました。そして、

「マタマンダチ・サクマンダチのところに来たしるしとして、これをあげましょう」

と言って、わたしに神の首飾りを下さいました。

 わたしは、感謝しながら、女神の家を出て、下りました。途中、サクマンダチ女神の家に泊めてもらいました。女神さまは、

「人間の娘よ、一番年下の雷の神がおまえを好きになって、連れてきたのだが、言うとおりにしなかったので、わたしたちのところに罰を与えによこされたのだね。おまえは、よく耐えたから、神のところに来た証として、これをあげましょう」

と言って、わたしに神の首飾りをくださいました。わたしは、それをゴザ袋に入れますと、

「気をつけて戻りなさい。おまえが雷の神の家についたら、ゴザ袋をほどいてみなさい」

と、わたしに教えてくださいました。

 わたしは、雷の神の山城に戻ると、女神さまに言われたとおり、ゴザ袋をほどきました。そうすると、家の中はハチでいっぱいになりました。男たちはハチに刺されています。

 そしてわたしは、神の力で運ばれて自分の山城に戻ってきました。煙も出ておらず、中に入ると姉さんが横になっていました。「帰ってきたわよ」とわたしが言うと、姉さんはわたしに飛びついてきました。わたしも姉さんに抱きついて、泣きました。姉さんは、

「わたしの話し相手は、おまえだけだったのに、連れられていってしまったものだから、わたしは毎日泣いて横になってばかりいたのよ」

と言いながら泣いています。わたしは、

「神のおかげで、わたしは生きて戻れたのよ」

と言って、これまでのことを話しました。そして、

「実はわたしたちはハチの神なのに、それを知らないでわたしを連れて行ったものだから、雷の神たちがハチに刺されている中、わたしは逃げてきたのよ」

と言いますと、姉さんは驚いていました。

 それからは、姉さんとおしゃべりしながらくらしていましたが、どこからか立派な長者が来たので、姉さんも、わたしもいい夫をもらいました。

 一方、雷の神は、わたしの一族がハチだなんて思わなかった、と言っていたということです。



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