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73.祖母と娘と糸虫

あらすじ:遠藤志保

 わたしは、おばあさんのところで育てられていました。

 大きくなると、わたしは、おばあさんが薪をとるときでも、山菜をとるときでも一緒に行きました。

 おばあさんが家にいるときでも、わたしは家の後ろにある小さな沢に行っては、そこをきれいに掃除して、毎日遊んでいました。

 やがて、わたしは大人の女性になりました。おばあさんは、年を取って体もきかなくなってきたので、おばあさんには仕事をさせないで、わたしは水汲みでも薪とりでも、なんでも自分ひとりでやっていました。そして、毎日小沢に行って、遊んでいました。

 ある日のことです。わたしがたくさん薪をとって、夕方、家に帰ってきますと、どこから来たのか、神さまらしく見えるニシパが上座に座っているので、驚いてしまいました。

 そして夕方になると、見たこともないおじいさんがタバコをふかしながら入ってきて、左座にすわり、神さまらしい人をにらみつけます。そこで、その神様らしい人が、「お前は何のために来たんだ?」と聞きますと、おじいさんは外に逃げました。神さまは、それを追いかけます。外では、おじいさんが逃げていく大きな声が聞こえます。

 そして、おじいさんはつかまったらしく、ずっと遠くにその死体が見えました。わたしはこわくなって、家の中にいました。おばあさんは泣きながら、

「ああ、こわい。悪い神が来たけれど、神さまがいてくれたおかげで、わたしたちは無事でいられたのね」

と言いました。

 やがて、神さまが戻って来て、こう言いました。

「わたしは、この家の後ろにある小さい沢にいる糸虫の神なのだ。この娘が小さいころから、沢に来て掃除をしたり遊んだりしていたので、わたしはそれを守ってきたのだよ。ところが、山の下に住むじいさんが、おまえたちを骨ごと食ってしまおうと思っているのを見つけたので、わたしは先回りをして、こうしてあいつを殺してきたのだ。娘よ、おまえはおばあさんが死んでしまい、結婚した後でも、『糸虫の神を祭ります』と言って、わたしを拝んでおくれ。そうしたら、いつまでもおまえたちを守ってあげるから」

 そして、神さまはいなくなってしまいました。

 それからわたしたちは、神さまに感謝しながら暮らしていました。

 おばあさんは年を取り、体がきかなくなってきました。すると、

「お前も大きくなったから、うちの川を下りなさい。そこに仲間がいるから、これまでの話をして、戻ってきなさい。そしてわたしが死んだら、墓を作って、宝物を持って下流の村に下りて、そこでくらしなさい」

と、わたしに言っていました。

 わたしは、おばあさんの言うとおりにしますと、下流には大きな村があります。その真ん中に大きな家があるので、そこを訪ねました。

 中には、おじいさんとおばあさんがいました。わたしは、おばあさんに言われたとおり、これまでの話をしました。すると、おじいさんたちは、

「よく生きていられたもんだ」

と大喜びです。

 家のお嬢さんが料理をし、若い兄弟が山から帰ってきて、わたしたちは食事をしながら、身の上話をしました。

 そして、次の日に、おばあさんのところに戻って、お墓を作ってもらう約束をしました。

 次の日、村の人たちにも頼んで、自分の家に戻りました。そして、おばあさんのお墓を立派に作り、おばあさんの家を燃やしてしまいました。そして、家の宝物を背負って、下流の村の真ん中にある家で、いろいろと手伝いながらくらしていました。

そのうちに、おじいさんとおばあさんに「うちの子のおよめさんになってほしい」と言われ、わたしは兄の方と結婚しました。わたしたちはよく働いたものです。そして、夫の弟や妹も結婚し、仲良く暮らしました。

 そしてわたしは、自分の体験談を話して、川をきれいにしていると、神も守ってくれるものなんだよ、と息子たちに教えていましたが、わたしももう年を取ったのです。

 と、若い女が話したお話です。



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