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67.漁場から逃げた石狩びとと老夫婦の犬

あらすじ:遠藤志保

 

 わたしは石狩の人間です。

 石狩の川口に住んでいる和人たちは、魚をとる時期になると、アイヌを使っていました。悪い殿さまたちで、アイヌたちは、魚をとりながらも、いじめられたり殺されたりしていて、恐ろしく思っていたのです。

 わたしは働き者ではありましたが、「いつまでこうして和人に使われるのだろうか?」と、恐ろしく思い、「逃げなくては」と思ってばかりいました。

 ある年、また魚をとる時期になると、また和人たちに仲間たちが使われて、何度も殴られる様子を見て恐ろしくなりました。そして、ある晩、

「どんなことをしても逃げなければ、生きられない」

と思い、仕事をしながら、荷物をつくって準備をしていました。

 2、3日して、夜になると、わたしは船の中に荷物や食べ物を入れて、石狩川を上っていきました。明るくなると、船を陸に上げて船と荷物を隠しました。

 何日かそんなことをして、遠くの山にやってきました。船を陸に上げますと、どうしたわけか犬の足あとがあります。わたしは、その足あとを追って、木原も横切り、川からずっと離れたところにある大きな古い家に着きました。その家の中に入ってみますと、おじいさんとおばあさんがいました。そこで、わたしは、自分が和人のところで働いていたけれど、あまりにもひどい仕打ちをされるので逃げてきたことを話しました。すると、おじいさんは、

「わたしたちも石狩の人間だったのですが、あまりに和人の仕打ちがひどいので二人で逃げて来てここに住んでいるのです。子どももいないので、犬だけを育てていましたが、わたしたちも年を取って、薪ひろいも水くみもできないでいましたら、犬が木の枝を引きずってきたり、シカや魚をくわえてきたりして、わたしたちを養ってくれたのです。こうして、犬だけを頼ってきたのですが、あなたのような若者がここでくらしてくれたら、ありがたいのですが」

と、言います。わたしは感謝して、いっしょに住まわせてもらうことにしました。

 そして、船から自分の荷物を運び、料理をしておじいさんたちに食べさせてあげました。すると、「若い人のおかげで、よい食事ができる」と、おじいさんたちは喜びました。

それからは、犬といっしょに魚をとったり、狩をしたりして、おじいさんとおばあさんを養いました。

 2、3年後、交易をしに行くのにも、石狩村に行くのはおそろしいと思ったので、別の村に行って、塩や酒を手に入れて帰ってきました。おじいさんとおばあさんは、とても喜んで、神々に感謝のお祈りをし、先祖供養もしました。

 こうしてくらしているうちに、おじいさんもおばあさんも年老いて亡くなりましたので、立派なお墓をつくりました。犬も死んだので、神の国に送り、その後は、また別の犬をもらいました。

 また、別の村からやってきた人間が、一人、二人とやって来て、わたしの家のまわりに家をつくって住むようにもなりました。すてきな女性もやって来て、わたしの妻になり、子どももたくさん生まれました。こうして、何不自由ない生活をしていました。

 そして、わたしは自分の子供たちに、

「決してこの下流の石狩村には下りるんじゃないよ。もし下りたら、和人からひどい目に合わされるからね」

と教えていました。

 そして、おじいさんとおばあさんの面倒を見ているうちに、妻をもらって、子どももたくさんさずかりました。どこからかやって来た仲間たちも、家のまわりに住むようになりました。

 こうして、わたしは石狩の人間だったのですが、ここでおじいさんとおばあさんをよく養って、面倒をみてくらしたのです、と子どもたちに自分の体験を語り、

「決して石狩村に下りるなよ」

と教えてくらしているうちに、わたしは年老いて死ぬのです。

と、石狩の人間が話したということです。



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