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65.金の魚、銀の魚

あらすじ:遠藤志保

 わたしには兄が二人いて、何をするにも協力してくらしていました。

 あるとき、大きな港に住んでいる悪い兄妹の兄のほうが、

「この港にいる金の魚・銀の魚をとったものに妹をやろう」

と言って、そのために、金の魚・銀の魚をとりに行ったものが、おぼれ死んでいるという話です。それを聞き、わたしたちは腹を立てていました。

 そして、兄は、

「妹よ、聞くだけ聞いて助けに行かないわけにもいかないから、わたしは様子を見に行くよ。炉鉤をよく見ているんだよ。わたしが負けたら、この炉鉤から血がしたたるだろうから。そうなったら、わたしが死んだものと思っておくれ」

と言いながら、したくをして、出発しました。

 それからは、怒りのあまり、わたしは薪をとるのでも、まさかりで悪い女を切りつけるような真似をしていました。穀物をつくのでも、何をするのでも、そのような思いでしていました。

 何ヶ月だかたった後、炉鉤に沿って血がしたたっているのを見ました。わたしは、「兄さんは殺されてしまったんだわ」と思って、ひどく泣きました。

 そして、何をするのにも、悪い女を切りつけるような気持ちで、穀物をついたり、薪をとったりしていました。そのうちに、二番目の兄が

「しかたがないから、わたしは出かけることにするよ。ちゃんと留守番しているんだよ。炉鉤から血がしたたったら、そして西に血の雲を見たら、わたしが死んだのだと思うんだよ」

と言いながら、したくをして、出かけていきました。

 兄が出かけていった後、神の戦っている音が聞こえてきましたが、ある日、炉鉤から血がしたたっているのを目にしました。外に出ると、西に血の雲も見えます。

「兄さんは、殺されてしまったのね」

と思い、泣いていました。そして、今度はわたしが、

「わたしは女だけれど、何とかして金の魚・銀の魚をつかまえて来ましょう」

と思い、身支度をして、神さまたちに守ってくださるようにお願いをして、出かけていきました。

 例の港と思われるところに着きますと、魚をつかまえに来た人たちの死体がありました。

 港の端には、みにくい女がいました。その隣には、兄らしい人がいます。そして、

「女のくせに、生意気にもやって来たぞ。勇敢な男たちでさえ、このように死んでしまったのに」

と言いますので、わたしは腹を立てました。そして、神々に守ってくださるように祈ってから、船に乗りました。

 すると、金の魚も銀の魚も、西へ東へ泳ぎ回っています。わたしは、それを追いかけてもぐって、そこかしこを突きまくったあげくに、突いたものを陸に上げてみました。てっきり金の魚だと思ったのですが、それは人間でした。

「女が悪いのだ」

と、そいつは言うのですが、わたしはひどく怒って、切りつけました。そして、例の女を

「おまえのせいで、神も人間も、わたしの兄たちも殺されたのだ」

と言いながら、ひどく叩きつけると、そいつの兄が

「わたしたちが悪かった。助けてください」

と言います。けれど、聞かずに、その兄妹を殺してしまいました。

 そして、泣きながら家に帰り、かわいそうな兄のことばかりを考えてくらしていましたが、長者がやってきましたので、その人と夫婦になり、子どももたくさん生まれました。

 それからは、こういうわけで、悪い精神を持ってはいけないのだよ、自分の体験を教えながら暮らしているうちに、わたしは年を取っていったのです。



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