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63.急死した若妻への言葉

あらすじ:遠藤志保

 わたしは一人のニパです。わたしは、山に行って猟をしてくらしていました。妻も働き者で、耕作をしたり山菜をとったりして、何不自由なくくらしていました。

 そして、山向こうの村長の息子が奥さんをもらったという話を聞きました。けれど、その奥さんが病気で亡くなったということです。

 その村では、夜になると朝になるまで犬がほえて、眠れなくて困っているという話です。わたしは、どんな様子なのだろう、と思って、その村を見に行くことにしました。

 村を訪れると、村長は、

「わたしの息子が嫁をもらったのですが、急の病で死んでしまったのです。そして、新しい嫁を持たせると、夜のあいだずっと犬がほえて、わたしたちは眠れないのです」

と言いました。そこで、わたしはその息子の家に行きました。あいさつをして、夜はここに泊めてもらうことにしました。

 横になる前、女が火を消そうとします。けれど、わたしは火をたかせて、横になりました。その夜は、犬がほえつづけるのが聞こえます。

 真夜中になると、誰かが入ってきたのを見ました。そして、女の声でこう言いました。

「若者よ、よく聞いて下さい。わたしが何かの病気で死んでしまうと、夫は『もう妻を持たないよ』と言ってくださったのに、もう妻をもらっているではないか。わたしはひどく怒って、殺してやろうと思って、夜な夜な歩き回っているのだが、火があるために殺せないのです。だから、どうか火を消してください」

 そこで、わたしは火を消すようにたのんで、眠りました。

 朝になると、新しい奥さんが殺されてしまっているのです。わたしは、

「あなたの奥さんが死んだときに『妻は持たない』と言ったのに、すぐに新しい奥さんをもらってしまったために、死んだ奥さんが新しい奥さんを殺したのです。だから、これからは犬がほえることもないけれど、あなたは奥さんをもらってはいけませんよ」

と話しました。そして、村長にも、これこれこうだ、と話をしました。

 そして、これからはこんなことがないように神さまにもお祈りして、自分の村に帰りました。

 こういう体験を自分の息子にも教えながら、わたしは年を取ったのです。

 と、山向こうの人間が話したそうです。



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