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61.交易先で和人にさらわれた妹

あらすじ:小林美紀

 (妹の語り)

 私は兄さんと一緒に暮していました。兄さんは山に行くとシカやクマをたくさん獲ってきて、何も困ることなく生活していました。

 私が大きくなると、ある日、兄さんが「交易に行くつもりだよ」と言うので、私も手伝ってクマやシカの毛皮を縛って舟に積み込みました。兄さんは「お前も和人の村を見たことがないのだから、一緒に連れて行くつもりだよ」と言ってくれたので、嬉しくなり準備しました。

 翌日、舟で出掛け、途中で泊まったりしながら和人の村に着きました。まず、兄さんは仮小屋を作り、それから懇意にしている殿様の所に荷物を運びました。殿様は「ほしかったものを持ってきてくれたのだね」とたいそう喜びました。そして、兄さんは酒やタバコなどをたくさんもらい、飲んで酔って歌を歌いながら、仮小屋に帰ってきました。そして、私を連れて和人のところにいくと、「いい妹さんだね。とても美人だね」と和人達は言いました。

 そして、今度は帰る支度をして、舟に乗りました。家に着くと、荷物を運び、兄さんは「和人のところで、こんなにたくさんのものをもらいました。カムイ達よ、私たちを見守ってくださいね」と祈り、お酒を飲んで、眠りました。

 (兄の語り)

 私はお酒を飲み、酔って寝ていましたが、その間に妹がどうしたことかいなくなってしまっていました。方々を探し回りましたが、それでもわからないので、和人の村まで行きました。そこで、和人達が私たちの後をつけてきて妹を和人の村に連れ去り、家の中の六つの戸の向こうに隠しているという話を耳にしました。そこで、仮小屋を作り、「妹をどうにかして見つけて連れて帰りたいので、カムイ達よ、どうかお願いします」と祈りました。そして、真夜中になると、和人の家まで行き、和人達は眠ってしまっていたので、静かに六つの戸を開け、入っていくと、真っ暗な中で私の妹が忍び泣きしているのが聞こえました。そして、妹と思われるものの手に私の耳飾を握らせ、「ほら、お前の兄さんが来たのだよ。泣かないで逃げるのだよ」と言うと、妹は耳飾を手にし、私のものであるのを確かめて、泣くのを途中で止めました。

 私は妹の手をひき、外に出て、舟のところへ行くと、仮小屋を壊しました。そして、舟で家に戻ったのですが、和人達が自分達を追ってくるだろうと思い、恐ろしくなったので、持てるだけの荷物を持ち、妹にもそうさせて、ずっと山の中に行き、そこに家を作り隠れました。そうして、そこで狩猟をしながら生活していました。

 すると、どこからか一人の男性がやって来たので、「よかったら、私の妹と結婚して、隣に家を作って暮してくれないか」と言うと、承諾してくれました。今度はどこからか女性がやってきたので、私はその女性と結婚し、子どもにも恵まれました。

 子ども達にも若いときに交易に行ってこんな大変なことがあったのだから、お前たちが行くときも気をつけなさいということを教えながらこの世を去りました。とどこかのアイヌが語りました。



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