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58.相妻たちと流行り病

あらすじ:小林美紀

 私は働き者の男性と結婚し、夫はで山でシカやクマを獲り、私は畑仕事をし、たくさんの食料があり、生活の上で困ることは何もありませんでした。ただ、私たちに子どもがなく、子どもがほしいと思っていました。

 ですから夫に「村の気に入った娘をもう一人の妻として迎えてください」と言いました。夫はその通りにし、相妻には別の家を作り、その家と私の家を行き来し、私はどんな仕事でもその相妻と一緒にして暮していました。

 相妻には男の子が生まれ、私はとても嬉しく思っていました。冬になると、夫はシカの皮やクマの皮を用意し、交易に出かけて行きました。そうして、夫が出かけてしまった後も、相妻と話をしたり、助け合って一緒に仕事をし、子どももかわいがって暮していて何も困ることはありませんでした。

 夫が出かけていって大分経ったころ、相妻が「恐ろしいことに、このあたりで病気が流行っていると聞きました。先祖からの言い伝えを聞いたことがあるので、おばあちゃんから聞いたようにしたいから、あなたも手伝ってください」と言いながら、まさかりを背負って外に出ました。私も子どもとまさかりを背負い、相妻の後を追いました。水汲み場を通って川の側に下りると、夏の終わりだというのに葉っぱが生え、花も咲いている木がありました。「どうして葉っぱも生えて花も咲いているのだろう」と思っていると、相妻が「二人でこの木を切りますよ」と言い、木を伐りつけました。もうちょっとで倒れるというところで、「この木が倒れた方に病気があるということだから、それを見て逃げますよ」と相妻が言いました。すると、木は浜の方に倒れたので「山の方に逃げましょう」と言いながら、家に戻り、二人で背負えるだけの荷物を背負い、山の狩小屋に行きました。

 それからは毎日、「夫は本当に生きているのだろうか」と心配しながら、二人で泣いていました。一月経っても帰ってくる様子がないので、「夫も病気で死んでしまったのだろうか」と泣き暮していました。

 ある日、日も暮れたころ、相妻が人の声がすると外に出て行くと、「だんなさんが帰ってきましたよ」というので、私も外に飛び出しました。夫は顔色が悪いながらも、狩小屋に入って「カムイのおかげで、お前たちは生き延びたのだなぁ。私は途中で病気にかかって、なんとか頑張って、家に戻ったけれど、誰もいないので、こっちにいるのだろうと思って来たんだよ」と言いました。私たちは喜んで、料理を作って夫に食べさせ、力をつけ元気になりました。そうして、狩りをしていました。

 春になると、私たちの家のところへ下りていきました。家の中をきれいにし、夫はまた私の家と相妻の家を行き来しながらいるうちに、相妻の方には子どもがたくさん出来ました。夫は山で猟をし、私たち妻は助け合って仕事をし、何不自由することなく暮しました。子ども達がだんだん大きくなると、「あなた達のお母さんはおばあさんの話を覚えていたんだよ。どこからか病気のカムイがやって来て、夏の終わりに木に葉っぱや花がついていたから、聞いたとおりに二人で切り倒して、木が倒れるのを見て逆の方向に逃げたんだよ。そうして生き延びることができたんだよ。だから昔の人の言うことはよく聞いて守りなさいね」ということを話しながら、この世を去りました。とどこかの奥さんが話しました。



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