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44.漁場から逃げた石狩びとと猫

あらすじ:小林美紀

 私はイの人間で、毎年働きに行きながら、普段は山でクマやシカを獲りながら暮していました。きれいな妻がおり、子どももたくさんいるので、家族を養うために働いていました。

 漁があると仕事をするため、浜にいましたが、和人の要求が厳しく、恐ろしく思っていました。「いつまでも和人の側にいたら子ども達もかわいそうだ。山の狩り小屋に行き、家を作っておくから、いつか家族一緒に逃げよう。和人の村にいたら、いつまでも恐い思いをしなければならない。子ども達の為にも、どこか山の方に逃げよう」と話すと、妻は承諾しました。

 二三日、私たちは背負えるだけの荷物を舟に積み込み、上流のずっと山のほうに進んでいきました。作っておいた家に着くと荷物を運び、子ども達に「今からはここで暮らすのだから、決して外に出るのではないよ。誰かに見つかったら恐いからね」と言いました。

 そして、そこで山に猟に行きながら暮らしていました。私はここに一匹の猫を連れてきていたのですが、ある日山に行く支度をして外に出ようとすると、その猫が私を追いかけてきました。家に返そうとしたのですが、どこまでも私を追いかけてきました。進んでいくと、大きな倒れ木があり、この木を回っていこうと思っていると、例の猫が先に行き、倒れ木の上に上りました。私が側を通ろうとしたとき、その倒れ木の後ろから、大きな声がして私に飛びかかってきたものがいました。見てみると、それは大きなクマでした。クマが私に飛び掛りそうになると、猫はクマの顔に飛びつき、クマをやっつけようとしました。猫が闘っている様子を見て、私も弓矢を持っていたので、クマを射ました。そうして、クマを殺したのですが、本当にびっくりする出来事でした。猫のお陰で私は今もこうして生きていることが出来るのだと思いながら家に帰りました。

 そして、その出来事を話し寝ると、夢を見ました。枕元に年老いたおじいさんがいて私の方を向いてこのように話しました。「話すからよく聞いてください。私はクマのおじいさんです。あなたは本当に勇気があり、狩りもとても上手であるのを前から見ていました。カムイたちにあなたを殺し、背負ってきたら、偉くなれるといわれたので、あなたがやって来るのを見て倒れ木の後ろにいたのです。考えてもいなかったのに、猫が私に飛び掛ってきて、何も出来ず、あなたと猫に殺されてしまったのですが、これからは悪い心は持たないようにしますから、今までのようにいられるようにしてください」

 私は目覚めて、食事をして山に行くと、例のクマの肉を「鳥でも何でもクマの肉だから食べなさい」といいながら置いてきました。

 それから、山で狩りをしたり、魚を獲ったりしながら暮らし、村のことを懐かしく思いながらも、下りていくのは和人達がいて恐ろしいのだということを子ども達に伝えていました。子ども達が大きくなると、一緒に山に行き、それぞれの家を作って暮しました。

 若いときには猫のお陰で助かったことがあったということを言いながら、年をとりました。とイの人間が話しました。



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