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42.キツネに化かされた若者を助けた娘

あらすじ:小林美紀

 私は母の仕事を手伝いながら暮していました。

 大きくなって一人前の女性となってからは母に教わったことをして、何不自由することのない生活をしていました。

 ある晩、おしっこがしたくなり、どうしても我慢できなくなったので、暗い中起きるのは恐かったけれども、外に出ておしっこをしていると、どうしたことか私のおしっこが、白い靄になってどっかにいってしまいました。木原や川を横切ってずっと遠くに行く様子を私はじっと見ていました。靄は山に行くと、川に沿って上流に向かって行きました。本当にびっくりしてじっと見ていると、川の途中に狩小屋があるのですが、その小屋に入りました。

 小屋の中では一人の若者が寝ていて、その前後を一匹のキツネが跳び回り、若者を化かそうとしています。若者は寝返りを打つことも出来ないでいました。それを見て、靄が行ったように私もその家まで行って中に入りましたが、キツネは気づきませんでした。私はキツネのしっぽをわしづかみにして、地面に叩きつけました。そして、若者にお祓いをして、起こしました。若者は目を擦りながら「悪いカムイに化かされて眠ることも出来ないでいたんだ」というので、「しっぽを掴んで地面に叩きつけてあっちにおいてありますよ」と話すと、若者は地面に叩きつけてキツネを殺しました。「どこからか来たお嬢さんのおかげで、私は今こうして生きていることが出来るのですね」と若者は話しました。

 私はどこから来たのかは告げずに夜が明ける前に家に帰りました。そして、そのようなことがあったことは家族には話しませんでした。

 「どこかのお嬢さんが私を助けてくれたのですが、どこの人だかわからなくて捜しているのです」と言って家々を回っている人がいるという話を聞きましたが、私はそれでも黙っていました。

 ある日、家の外で犬の鳴く声がし、「外に誰か来たみたいだから、入っていただきなさい」と私は言われて、外に出てみると、私が助けた若者と連れの人が来ていました。「どうぞ、入って休んでください」と言って、私は家の中に戻り、かしこまっていました。すると、若者達が入ってきて、母と兄のところに来て「山に狩りに行って寝ているときに悪いカムイに化かされ、寝ることも出来ずにいたのですが、どこからか来たお嬢さんに助けられたのです」と事情を話しました。「お前がこの若者を助けたのか」と兄に聞かれたので、私も夜におしっこに行ってこういうことがあったのだということを話しました。すると、兄はとても驚き、若者は拝礼しながら、感謝の言葉を言いました。そして、私との結婚を申し込み、兄は承諾しました。

 若者と結婚し、若者は山でシカやクマを獲り、その合間に交易に行き、いろいろな物を手に入れ、仲良く暮らしました。兄は結婚し、たくさんの子どもにも恵まれました。私たちにもたくさんの子どもが出来ました。

 そして、「若いとき、夜おしっこに行って、そのおしっこが靄になって山の狩小屋に行き、そこで若者がキツネに化かされているのを見て、それを私が助けたという縁で結婚し、今こうやってお前たちがいるのだよ」と子ども達に教えながら、この世を去りました。と一人の女性が語りました。



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