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40.番頭と仲良くなった奥方を逃がして妾にした男

あらすじ:小林美紀
 

 私は山でシカやクマをたくさん獲って暮していました。私の妻も働き者で、ウバユリを掘ったり、畑仕事をして食料をたくさん作り、何も困ることなく暮していました。私は毎年、シカやクマの皮を持って交易にも行き、今年もまた交易に行きたくなったので山で獲ったシカやクマの皮を舟に積み込み出かけました。

 二、三日して懇意にしている和人の殿様のところに荷物を持って到着すると、殿様はたいそう喜びました。そして、米やタバコ、着物ももらって感謝しながら、舟に積み込み、明日は帰ろうと思いながら、殿様に酒をもらって飲みました。そのとき、殿様の奥さんと番頭が仲良くなったために、番頭が殺されたという話を聞き、気の毒に思いました。

 夜中になって自分が泊まる小屋に行き、横になっていると、何か音が聞こえてきました。どういうことか見てみると、殿様の奥さんだと思われるきれいな女性がやって来て私の懐に飛び込み、「アイヌの方よ、どうか私を隠してください」と言いました。私はこの状況を恐ろしく思いながらも、「カムイよ、このように私の懐に女性が飛び込んできたから、どうか見つからないようにしてください」と祈りました。

 しばらくすると、殿様たちがやって来て「誰か来なかったか」と聞くので、「誰も来なかったですよ」と震えながらも私は答えました。すると、彼らは私の舟のところへ行って、そこも確認していました。

 夜明け近くなると、私は起きて、例の女性を船底に隠しました。そして、殿様に「私はもう帰りますね」と声を掛け、舟に乗り込みました。

 そうして私の村に着き、妻に訳を話すと、妻は理解してくれました。「この人が村の近くにいるのは恐ろしいので、遠くの狩り小屋に連れて行って隠すよ。どうにかして、この和人女性をアイヌの女性のようにしてくれないだろうか」と妻に言うと、妻はこの女性の口に入墨をし、髪も切り、アイヌの女性のようにしました。

 そして、山の狩り小屋に隠し、毎日番をしました。

 二、三年は交易に行くのも恐ろしかったのですが、行き来せずにいると、殿様のところからも何も言ってこないので安心し、この和人女性を二番目の妻として迎え、別の家を作りました。村人達も「どこから来た女性か」とは聞きませんでした。そうして、安心して暮らし、妻と二番目の妻は何でも助け合って仕事をしました。交易に行くのが恐ろしく、長いこと行っていなかったのですが、今度は別の和人の殿様のところに交易に行きました。そうして暮している間に、妻にも二番目の妻にも子どもがたくさん出来ました。私は山に狩り行き、獲物を獲って何事も不自由することなく暮しました。

 若いときには交易に行ってこのように大変なことがあったということを子ども達に伝えます。

とどこかのアイヌが話しました。



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