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34.鍋のおつげ

あらすじ:小林美紀

 私は働き者の男です。山には狩り小屋を持っていて、そこに泊まってシカやクマを獲ったりしていました。

 狩り小屋に泊まり、獲物を背負って山から下り、家に帰って何日かいました。そんなある日、日が暮れるとどこからか何かが「潰された。潰された」と声を立てながら何かが落ちる音が聞こえ、それは私の家に段々近づいてきました。「一体何がこんなふうにやってくるのだろう」と思っていると、私の庭にまでやってきました。見てみると、驚くことにそれは私が山で使っていた鉄鍋だったのです。山にいるときに狩り小屋で煮炊きに使っていた鉄鍋が「潰された。潰された」と言いながら、山から下りてきたのでした。

 私は鉄鍋を手にすると、火の傍にいって座り、「何かの知らせのように、このように鉄鍋が山から『潰された』と言いながら、下りてきたのだけれども、どういうことなのかわからないので、火の女神よ、教えてください」と言いました。

 そして、眠りにつくと夢を見ました。「悪いクマがお前が山で何も恐いものがないかのように獲物を獲ることに腹を立て、殺して食べてやろうと狩り小屋に行ったのだけれども、お前がいなかったので、家の中にあったものや鍋を叩いて潰したのです。鉄鍋はそれを知らせにやってきたのです。悪いクマはまた明日もやってくるでしょう。そういうことだから、私はお前を見守ってあげるから、矢で射て殺してしまいなさい」ということをカムイは夢に見せたのでした。

 次の日、狩り小屋に行ってみると、悪いクマは家の隅に穴を掘り、鼻だけを出してその中に入っていました。私はそれを見たけれども、見ていないかのようなふりをして、クマを矢で射ました。すると、クマは私に飛びかかってきたので、二度三度と射て、クマは倒れました。クマを外に出してぐちゃぐちゃにされた家の中をきれいにしました。

 その日はそこに泊まり、寝ると夢におじいさんが出てきてこのように話しました。「お前は山に来ると、クマでもシカでもたくさん獲るので、そのことを腹立たしく思っていたのだが、カムイたちがお前を殺したら偉くなれると言うので、私はお前を殺そうと思って家に行ったのだ。けれども、留守だったので、腹立たしく思って、家の中にあるものを叩いて潰したのだ。鉄鍋がお前に知らせに行って、私はこのように殺された。自分が悪かったのだ。これからは悪いことをせず、お前を守るから、カムイたちと一緒にいれるように拝んでおくれ」

 次の日、例のクマを「クマの肉なのだから食べなさい」と腐った木などに分配して、カムイに拝み、家に戻りました。

 こうやって鉄鍋が知らせを持ってきてくれたおかげで、生きることができたのでした。その後、結婚し、沢山の子どもに恵まれ、何不自由なく暮しました。「このように悪神がいろいろと考えていたのだけれど、カムイ達に見破られたので、私はうまく対処することが出来たんだよ。もうこの世を去るときがきたから、このように言うのだよ」とどこかの人間が話しました。



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