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105. ポロシ山頂の湖を見に行った男の話

話 者:川上まつ子
資料番号:34708
収録日:1986年8月19日
「私」:ニナチミ(荷菜摘)の人
登場人物:ニナチミの人、その家族、村人たち
翻 訳:遠藤志保
サンプル音声

<あらすじ>

 わたしは、ニナチミの人間です。「ポロシ山の頂上には、海にそっくりな大きな湖がある」という噂があり、ある日、それを見に出かけました。

 ポロシ山の下に着くと、「山が険しくとも、カムイの住まいを見せてもらえるよう、守ってください。無事に帰れたら、イナウや酒でお返しをします」と祈りました。

 山が険しいので、木をつかみながら登るうち、夕方になりました。落ちずに眠れそうな大木があったので、そこで休みました。目覚めると、また登りますが、何度も滑ります。途中、山頂から凄い風も吹きました。

 そうこうして頂上に着くと、本当に海のようです。海鳥が旋回し、昆布も生えています。その素晴らしさに感心し、「カムイの住まいを拝見したので、わたしが死んだら、この山でカムイと共に暮らします」と祈りました。また、「手ぶらでは嘘だと思われるので、昆布をください」とお祈りをして、昆布を背負いました。

 夕べの大木の近くまで下りて来ると、背中で何かがモゾモゾします。不審に思って見ると、荷物が大きな蛇になっていました。わたしは、「驚いた。昆布だと思ったのに、カムイであったとは。蛇には見えず、昆布だと思って背負ってしまったのです」と謝りながら背負い縄をほどくと、蛇は這って行きました。

 川を下るうちに暗くなりましたが、夜も早いうちに村に着きました。家に入ると、心配していた家族に、道中少し恐ろしかったが、カムイの住む所を見せてもらったことを話しました。

 翌日、村人に様子を話しました。そして、イナウや酒で、ポロシ山の上に住むカムイや、途中で泊まった木のカムイに祈りながら暮らしていました。

 それからすぐ、わたしは病気をし、今にもカムイの国へ行きそうです。どうか先祖の所に向かって供養しないで、「ポロシ山の頂に住むカムイの所へ、ニナチミから行った人間に対しての先祖供養です」と言ってください。そうすれば、わたしは供物を受け取れ、カムイたちにも分けられるでしょう。そうしたら、カムイの所でも困らないでしょうから、どうぞ、忘れずにそうしてください。

と、ニナチミの人間が話しながら死にました。



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