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79. トゥンニカウンクの自叙

話 者:川上まつ子
資料番号:34621
収録日:1985年10月16日
「私」:トゥンニカウンク
翻 訳:北原次郎太
サンプル音声

<あらすじ>

 私の父はトゥンニカコタンという村に住んでおり、私を大切に可愛がりながら、神であるかのように育てていた。私は、どこにあるものでも、どんなに遠くのものでも千里眼で見ることができた。そして風になり、雲になって、遠い村や近い村など国中を走りまわっていた。

 そんなある時、神であるらしい老人が夢に出てきて、「私はランケカント(下界)を司る神であり、お前の神の父である。お前の人間の父は、大変精神が良く、私にいつも素晴らしいイナウを捧げて祭ってくれ、そのお陰で私は自分の神格を高められている。お前の人間の父に、どのように恩返しをしようか考えていたところ、子供を欲しがっていた。お前の人間の母親もまた、精神が良い者である。そこで、私の小さな息子であるお前を、その夫婦に授けたのである。お前は神の子であるから、千里眼を持ち、風になり、雲になって飛んで行くことが出来る。自分の村だけでなく、川上周辺の村も見回って、人間が平和に暮らせるように守るのが神の務めであるぞ。」とのお告げがあった。

 その後私は自身の神格を高め、神の子として村々を守って暮らしていた。石狩川の河口を千里眼で見てみると、村長が交易へ行くため、若者を誘って遠い国へ連れて行った。行器などの宝物を舟に積み込んだ後、村長は村へ戻って来たが、一緒に行った若者達の姿はなかった。なんと村長は、若者達を和人に売り、若者達は生きたまま肉を剥がされて、釣りの餌にされていたのであった。遠い所へ連れて行かれた息子が帰ってこない事を心配し、泣きながら暮らしている若者達の家族の様子を見た私は、石狩川の河口の村へ、風になり、雲になって飛んで行った。

 村長の家に着いた私は、村長の両耳を掴んで振り回しながら、「神々はお前の行いを知って怒り、私は神々の代理でやって来た。あの舟の中で苦しんで死んだ若者達と同じように、お前達も苦しむがいい。」と言い放ち、村長とその息子達、娘達の手足を斬って外へ飛び出た。村人達は大声で泣き叫び、私の反対側へ逃げて行った者は、村長と一緒になって若者を売った一味であるため、追いかけて手足を斬った。反対に、泣きながら私に方へ向かって走って来た善良な人達は生かしておいた。手足を斬られずに生き延びた人は少なく、殆どの村人が、私に手足を斬られた。「化け物なのか、神なのかわからないが、こんな苦しい思いさせるぐらいなら、いっそのこと殺してくれ。こんな姿だといつまで苦しい思いが続くか。」と、手足を斬られた者達は泣いた。私はすぐまた風になり、雲になって自分の家に戻った。そして人間の父に石狩川の河口の村でのことを話した。父は「お前がいなければ、あの村の若者達は皆売られ、殺されてしまうところであった。他の村の事であっても、お前は復讐をしてきた。お前に加護があるように。」と拝礼をし、私を褒めた。

 その後も、自分の村から石狩川の河口までの村を見ていると、若者達が山で熊に襲われていた。私が行かなければ殺されてしまいそうだったので、すぐに飛んで行ってその獰猛な熊を殺した。そのお陰で、若者達は恐ろしい思いをしながらも、無事に生きて帰って行った。

 そのように毎日村々を守りながら暮らしていたら、私は結婚しても良いほどに成長していた。私に相応しく、美しい娘を妻にして一緒に暮らした。娘と息子ができ、毎日子供達を可愛がった。

 夜が明けるといつも私は川の上流へ走って、人間が襲われないよう守り、助けていた。村人達は感謝をし、お礼に宝物を背負って来た。「私は何不自由なく暮らしているので、その様な物は必要ない。私に感謝をしたいのならば、貴方達の子供達、孫達に、争い事などをせず仲良くし、私の子供達、孫達とお互いに遊びに行き来する様言い聞かせてくれれば良い。貴方達の物はいらないので、また背負って帰りなさい。」と言うと、皆喜んで宝物を背負って戻って行った。

 私の父は、私の神の父、ランケカントコカムイの所へイナウや酒、食べ物などを毎日のように送ってくれているので、神の父は大喜びし、更に私を守護した。

 年月が経ち、私は立派な人間の父に孝行しながら暮らしていた。そうして、年老いた父は、神の様な立派な死を迎えた。

 「人間であろうと神であろうと仲良くし、困っている人を助けるのだよ。」と私は子供達に言いきかせ、ランケカント、神の父の所へ私も行く日が近いので、それを待っているところなのである。

とトゥンニカウンクは語った。



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