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74. アオバトになった和人のきこりの話

話 者:川上まつ子
資料番号:34601
収録日:1985年5月8日
「私」:アオバト
翻 訳:本田優子
サンプル音声

<あらすじ>

 内地の和人が、樵をするのに北海道へ渡って来た。大きな沢の河口に小屋を建ててそこに泊まりながら毎日木を切っていた。

 そんなある時、大雨、大嵐になり、毎日凄まじい雨風が吹いた。そのため、すっかり地面が緩んでしまったようで、あちらこちらで岩石が崩れ落ちている。ところがその和人は逃げずに、自分の小屋を守っているようだった。

 そうしているうちに、土砂崩れに遭い、家とともに巻き込まれて沢底に埋まってしまった。その和人は死んでしまったが、和人の結ってあった髷がどういうわけか生き返り、ワオと鳴く鳥、アオバトとなった。

 アオバトの私は、あちらこちらへと飛び回って遊んでいると、アイヌの子供達が「ワオ、ワオ」と言って鳴き声を真似したので、どうしようもないくらいにとても腹が立った。自分のように飛べないくせに、子供達は両腕を伸ばして羽を広げたような格好で、私が飛んでいる下を走り回る。私はあまりにも腹が立ったので、川の水も沢の水も止めて、ひどい目にあわせてやろうと思った。

 私は、川や沢の水を止めた。人間達は水がないので炊事をして食べることが出来ず、水も飲めずにいた。そうして飲まず食わずで多くの人間が餓死してしまった。それどころか、一緒に神までもが死んでしまっていた。

 オキクルミカムイが「川を干しあがらせ、沢を干しあがらせて水を無くし、人間ばかりか神までもが死んでしまっている。いつまでも水を出さずに、そのままワオワオと鳴き続けているのならば、罰としてお前を地獄の谷に突っ込んで、ひどい目に合わせてやるからな。それが嫌なら、早く水を出せ。そうすれば、お前は今までどおり、山で自由に飛び回って暮らせるのだぞ。」とアオバトに迫った。さらにオキクルミは「本州から渡って来た和人が山の中に家を建て、毎日木を切って樵の仕事をしている時、大嵐となり雨が降り、何日も暴風雨が続いた。そのため、地面が緩んで家とともに土砂が滑って崩れ、それに巻き込まれて沢底、谷底へと押し潰されて死んでしまった和人の髷が、お前であるのだぞ。そこでお前は助かり、ワオと鳴く鳥になったのだ。そんなことを知らないお前は、人間のことが面白くなくて水を出さないでしまったのだ。」と話した。オキクルミから罰を当ててやると怒られて初めて、和人の髪の毛であった自分がワオと鳴く鳥になり、この村の上や、山から鳴いきながら飛び、歌って飛んでいたのだな。水を出ずにいたら、オキクルミが言ったことは脅しではなく、本当に私に罰を与えるつもりであることが分かり、慌てて、止めていた沢の水、川の水を元どおりに出した。きれいな水が沢山流れ、大人から子供まで、アイヌも和人もみんな喜び、水をいっぱい飲んで、水汲みをした。

 オキクルミカムイは「お前が言うことを聞かなければ、本当にひどい目にあわせるつもりであったが、約束どおり水を出してくれた。アイヌも神も生きていけるから、好きなように自由にこのアイヌの村、アイヌの山から飛び回って生活すればいい。」と言ったので、私は安心した。それから毎日、ワオ、ワオと鳴いて川上へ上ったり、川下へ下ったりして、楽しくアイヌの村の上空を飛び、遊んだ。

 アイヌの子供だけでなく、和人の子供も小さいときは色々な悪戯をしたりするものなのに、アイヌの子供ばかりを悪く思い、水を止めて神までをも殺したために罰が当たるところであった。水を元どおりに出しなさいとオキクルミカムイに言われたので、今では明るい北海道を好き放題にワオ、ワオと歌いながら楽しく飛び回って遊んだ。

 と、アオバトが語った。



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