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39. 神の山の大カジカの話

話 者:織田ステノ
資料番号:34152
収録日:1981年9月13日
「私」:ある村の若者
翻 訳:高橋靖以
サンプル音声

<あらすじ>

 私は父親と母親と暮していた。父親は働き者で母親も働き者で、何の心配もなく成長した。成長すると父と山に行き、狩りの方法を教わった。父が年老いると一人で狩りをし年長者たちを養った。

 あるときに鳥や犬の噂に聞くと、イアルモイサの村の奥に神の山があって、山の頂上から晩になると村のまわりが明るく光って、村の人は「神というもの」といって恐れ山にも行かず、女性たちも恐れて、村が消え失せようとしているという。その噂を聞いて私はひどく驚いた。「何が光るのか」と私は思いながらいたが父母は「恐ろしいから行くな」と言い、私も行かずにいた。

 ある日杵つきや薪とりをして食事をし、横になっていると、眠ろうとは思わなかったのに、眠ったところ、神窓から神のようなおじさんが次のような話をした。「若者よ、話すから聞きなさい。あなたがイアルモイサの村をあわれむ様子を私は見た。明日出かけるつもりで年長者たちが生活に不自由しないように用意する様子を私は見たので、あなたがでかける前に聞かせるのだ。よく聞いてそのとおりにしなさい。イアルモイサの村では、たいまつだかインカペだか、日が暮れると虫も目が見えるほどあたりが明るくなる。昔沖から村を滅ぼすものが上陸した時に、一匹の大きなカジカが村の奥の大きな岩の間に引っかかった。動くこともできずその場にいて、毎年成長して大きなカジカになって、岩の間に生き残り、水もないのに生きていている。村の方を見ているので、村の上空が明るくなり、今までそのような状態だ。あなたは先に山へ行って、そのカジカを見てから村に沿ってくだり、村の真中の村長の家に入って泊まって様子をうかがいなさい。」そう言ったように思うと目が覚めた。

 私は腹をたて「カジカも年長者たちの食料だというのに、どうしてそのようなことをするのか」と思い、驚き恐れながら起きた。炊事をして父母に「二三日山に行きます」と言い、食料を持ってイアルモイサの村の方へ行った。山の頂きに上って様子を見ると、イアルモイサの村の奥に大きな神の山があり、その神の山の方へ行った。神のいうとおりに進んでいって、神の山の頂きに上ってあたりを見ると、大きな岩があった。その岩の側へ行って見ると、大きなカジカの尾びれが見えた。目は大きなシントコが両側にあるかのようで、「この悪神の仕業で人々が生活できなくなっていることを神が聞かせたのか」と思い私はひどく腹をたてた。その神の山に沿って下り、川を下り、日が暮れる前にイアルモイサの村の上手についた。村に沿ってくだると村の真中に大きな家ががあって、その家の外に着いた。

 咳払いをすると少女が出てきて私を見て「見たことのない若者が家の外にいます」と言った。すると年長者たちは「座を整えて招き入れなさい」と言った。私は家に入ってみると、年長者たちや若者がいたが、顔色がよくない。年配のニパ(立派な男性)が私に拝礼して「あなたはどこからきたのか」とたずねるので、私は「山で道に迷ってこの村の方へ来た」と言った。すると「早く食事を出してあげなさい」と年長者は言った。炊事をしている傍らでそのおじさんは「もう二年か三年か晩になると川の奥から何かが光り村が明るくなって眠るのもおそろしい。男も女も山へ行くのをこわがって、明るくなると眠って、晩になると眠ることもできない。早く食事をしなさい。悪神か神かがまた光り出すと眠れなくなる」と言った。私たちは食事を終えると娘が寝床をつくり、私は休んだ。家の人はすべて横になった。するとあたりが急に明るくなった。私はひどく驚き静かに外に出て見ると、村の奥の神の山の頂きにあるシントコのようなものから光が出て、村中明るくなっていた。私は家の中へ入って横になり、翌朝起きて火をたいたところ、「昨晩はどうして眠ることができたのか」と言って家の人々が起きてきた。「昨晩光るものを見たので、足の速いものがいるならば一緒に行ってみよう」と私が言うと、若者はふるえて、「どうして光るもののところへ一緒に行くのか」と言った。

 私は村の若者、足の速い者と一緒に村を溯り、神の山の頂きへ上がった。大きな岩の側へ行き、「このカジカの目が光って、今まであなたたちがこわがっていたのだ。海にいるカジカなのに、どうしてここにいて、あやうく村を滅ぼすところであったのか」と言って、カジカを取ろうとしたが、取ることも引っ張ることもできない。それから私は「木を切ってきなさい。木を使ってこの悪神を取り出して処罰しよう」と言い、若者たちは木を切ってきた。そしてどうにか悪神を岩から引っ張り出した。それから悪神を土とともに叩き、草とともに叩いた。それからイナウ(木幣)にする木を切って山手にヌサをたて、今まで海にいたものがカジカであるのに、どうしてこの神の山にいて、私が来るのが遅れたら、村が滅ぼされるところだったので、神々が見て、よいものであるならばそのような姿にしてください」と祈った。それから沖の方へ、海の神に対しても祈った。こうして山の方へも沖の方へも談判した。

 それから若者たちと一緒に山を下り、村長の家に入った。若者たちが事情を説明すると年配のおじさんは私に拝礼し、「これまで暮していたが、このようなことは聞いたことがなかった。昔は年長者たちが浜でとって食べる魚がカジカであったのに」と驚きながら神に祈った。食事をしてから横になったところ、昨晩も寝た寝床であるのに非常によく眠った。見ると家の中が暗いので、「悪神を私が処罰したのでこれからは光るものも出てこない」と思い眠った。すると神窓から黒い小袖を着たおじさんが神の様なおじさんが笑いながら次のように言った。「若者よ、昔波で村が壊されたときに、神の山の岩に引っかかったものが、海に戻ることができず、岩の間に隠れた。村を滅ぼそうと思って、村の上に目を走らせると村が明るくなって、人間は恐れて眠ることもできない。神々もどうすることもできない。あなたは人間の心をもっているので、私が言ったとおりにして、イアルモイサの村をあなたは救ったのだ。これからは何もおそれることはない。」何の神が何度も私に話をするのかと思いながらいると、朝になったので起きて火をたいた。家の人たちは「若いニvシパのおかげで昨日は夢も見ずに眠った」と言いながら起きてきた。年長者たちも起きてきて、年長のおじさんは私に拝礼し感謝した。それから食事をすると人々が入ってきた。そして年長のおじさんは「あなたのおかげで安心して暮せるのだから、私の娘を連れて水汲みでも薪とりでもさせてください」と言った。

 私は自分の家へ戻って事情を話すと父母は驚いた。それから二三日後に私の奥さんが大きな荷物をもって人々と一緒にやってきた。人々は一晩泊まって帰っていった。私の奥さんは働き者で、私は猟運に恵まれた。父母が亡くなり舅たちも亡くなった。その後男の子が生まれ、それからも子供に恵まれた。子供たちに「カジカが村を滅ぼす前に私がかけつけて、おまえたちの母と一緒になり、おまえたちが生まれたのだ。何でも聞いてよく考えなさい」と言いながらいて、年老いたのです、とどこかの村の人が語った。



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