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36. あの世に行き、父の教えで村の危機が救われた話

話 者:織田ステノ
資料番号:34148
収録日:1981年8月23日
「私」:ある村に住む男
翻 訳:安田千夏
サンプル音声

<あらすじ>

 ある村に、村人を大切にしつつ暮らしている村長とその奥さんがいました。浜に出て、イワシが流されて浜に上がって来ると、それを集めて村人に分け与えて暮らしていました。そのうちに海辺に大きな番屋を造って、漁場を開きました。海の向こうから和人の旦那さんたちが荷物を積んでやって来て、魚と交換していくようになり、村は栄えていきました。その村長にはひとりの息子が生まれ、父と母と同じように村人を守り、村を守りながら暮らしていました。そのうちに父と母は死んでしまい、息子はお嫁さんをもらって村人を守りつつ暮らしていました。

 ある日風が強いので、舟を陸にあげようとして、舟をあげるための丸太を伐り出しに山に行きました。すると突然みぞれが降って来て前に進むことができなくなりました。仲間たちともはぐれてしまい、這うようにして進んでいくと、大きなほら穴があったのでその入り口に入っていきました。雪がおさまるまでと思ってそこに座っていて、ふと穴の中のほうを見ると、下の方に向ってずっとその洞窟が続いていることがわかりました。何を思ったかそこに入ってみたくなり、奥に進んでいってみると、後ろはどんどん暗くなり、前の方が明るくなって来ました。急に外に出たので驚いて見ると、そこには大きな村があったのでした。村の下端から村へ続く道があったので歩いて進んでいくと、道の両側には家がありました。木幣が全くない家、古い祭壇がある家もありました。それを見ながら進んでいって村の中央を過ぎた頃、なんと村の上端から、若い頃の姿をした父と母が並んで歩いて来るのが見えました。死んだとばかり思っていたのに、ここで生きていたんだと思い、挨拶をしようと思ってそちらに進んでいくと、父は足早に下りて来て、挨拶をする間もなくこういいました。

 「息子よ、今日おまえがここに来たのは、私がわざと呼び寄せたからなのだ。おまえの村を和人たちが襲いに来るきざしを見た。この巻き紙(?)を授けるから、和人の船団が上陸したら、これを広げなさい。悪者たちがやってくる前は、村人たちは決して陽にあたらないように、家でかしこまっていさせなさい。それからおまえが見た通り、身内のない人たちや何も供物をもらえない人たちは寂しがっている。戦の後で、そのことを村人によく言って聞かせなさい。さあ、そしてもう早く帰りなさい」そして紙を差し出したのを受け取ると、父は早く帰れといって怒りました。急いでまた洞窟を通って外に出ると、雪はすっかり止んでいました。村に戻ると村人たちは驚いて、村長がいなくなってしまったので探しまわったのだけど良かったといって無事を喜んでくれました。

 翌日はいい天気で、村人たちが海へ出ようとするので、それを父が言った通りに制止しました。村人たちはわけがわからないので怒りましたが、言う通りにさせました。

 陽が沈む頃、沖からたくさんの船団がやって来るのが見えました。村人たちには決して外に出るなと言い聞かせ、神に加護を祈りました。やがて舟は私たちの港に舟をつけ、和人がわらわらと上陸して来ました。私の家にも入って来たので、あの紙を出して広げると、その者たちは白い骨になってばらばらと崩れ落ちました。何度も紙を広げて、悪いやつらを滅ぼし、何人かは舟に乗って逃げて行ってしまいました。

 驚いてわけを尋ねに来た村人たちに指図をして「家の裏手に大きな穴を掘り、この骨を埋めなさい」と言いました。村人たちは言う通りにして、すっかりきれいに掃除をしてから祈りの儀式をしました。「襲って来た者たちは和人なのだから、和人のところに魂が行くようにしてください。父の言う通りにしたので生き延びることができました」と言って感謝の祈りを捧げました。村人たちには、先祖を顧みない人たちが寂しくあの世で暮らす様子を見たことを話し、決して供養を怠ってはいけないと諭しました。そして先祖供養をして、あの世にいる人たちがみんな供物を受け取ってくれるようにと祈りました。



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