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34. シナノキの皮はぎに行き、山すそに住むクマに襲われた話

話 者:織田ステノ
資料番号:34146
収録日:1981年8月21日
「私」:オタスッの村のニパ〜山の下端に住む熊〜奥方
翻 訳:高橋靖以
サンプル音声

<あらすじ>

 私は本当のニパ(立派な男性)であって、立派な奥方と一緒に暮していた。私の奥方は働き者で、手先が器用で、私も働き者で、何もほしいと思わずにいた。

 神たちは「オタスッのニパの奥方の美しさ、器用さ、働きぶりは神の中にもならぶものがいない」とうわさして何度もオタスッのニパを訪問した。ある年に神々がオタスッのニパと奥方の話をしているとその座にいたヌプリケウンアチャポ(山裾の熊神)が「人間は美貌や勇気、器用さを神の思慮によりもつものであるのに、神々は人間のニパ、人間の奥方の勇気や美貌ばかりうわさするのか」と怒って出て行った。

 私はいつかオタスッのニパの奥方を噛み砕いてやろうと思っていると、神々は「それならオタスッのニパの奥方を生きたまま連れて来てみろ」とけしかけた。

 翌日オタスッのニパが外出する前に奥方がこう言った。「今日はニペ(シナノキの皮)を取りに行きたい、どこへ行くとニペがありますか。」するとオタスッのニパは「この山道を行くとエコイカ(東)の方向に沢口をもつ大きな沢があるが、女性では沢の中へ下りると上へ上がることができない。沢口を過ぎてずっと行って、その沢の奥へ行くと小さいニペの林がある」と答えた。

 そこで私はタシロ(山刀)をもって出かけた。夫の言う通り、エコイカ(東)にある大川のところに沢口をもつ深く暗い沢があった。私はその沢を迂回して、沢の源流に上がって行くと、ニペの林があった。私はニペを剥いで大きな荷物をこしらえて、座って下を見ると、沢の中から大きな熊が這い上がってくるのが見えた。どこに逃げても熊に追いつかれると思ったので、荷物の陰に隠れた。熊が荷物を抱えた時に、私が荷物をけとばすと、熊はニペの荷物と一緒に沢の底へ転がり落ちていった。私はすぐにその場を逃げ出し山を下った。

 家につくと気疲れし、「ニペをとりに外に出たのに、偉いカムイがどうして私に襲いかかってきて、危うく食べられてしまいそうになったのか」と思って泣いた。

 泣いていると私の夫が山から帰ってきて、窓から荷物を投げ入れ、窓から私を見ると「どうして泣いているのか」と言ったので、「あなたの言ったとおりにニペをとって大きな荷物をつくっていると沢の中から大きな熊が上がって来て、逃げることができないと思ったので荷物の陰に隠れた。クマが荷物を抱えた時に私が荷物をけとばすと沢の中へ転がり落ちていった。それから逃げて帰ってきて泣いていたのです」と言うと、「本当に、偉い神々が悪い心をもって、このように私の奥さんを、神が見守るのが遅れたなら食べられてしまっていたのか」と夫は言い、荷物を入れると火の神に抗議した。「偉い神が悪い心をもって、危うく私の奥さんが食べられてしまうところだった」と私の夫は神に伝言した。食事を終えて思い返すと「神というものがいなかったら、このように座って食事していただろうか」と思い泣いて横になった。

 横になって眠ると夢にやせた悪いエカシが出てきてこう言った。「オタスッの女よ、おまえの美貌、器用さを神々がうわさして、腹が立ったので山に行ったが、「おまえは悪い心をもっているから、おまえは立派な神なのに、大きなニペの荷物を背負ってきた」と神々に馬鹿にされた。ひどく私は後悔しているので、おまえからとりなしてくれれば、おまえたちには子供がいなくても、たくさん子供が生まれるようになる。私が悪かった、あまり私を怒らないでくれ」とその悪いチャチャ(おじさん=熊神)が言った。

 私はひどく腹を立てながら起きて、食事の支度をし、「神がいなかったら悪い神に食べられていたのか」と思い泣きながら支度をしていると、夫が起きて顔を洗って座って、火箸をもち思案しながら「今までどおりにするのがよい」と言い、火の神に伝言した。そして食事を終えると外に出て、「こんなにたくさん背負えると思ってニペをとったのか」と言いながらニペを背負って下ってきた。その晩眠ると夢にその悪いエカシが出てきて「オタスッのニパとその奥方のおかげでこれまで通りに山の端に私はいます。これから私があなたたちの守護神となればまた神々はあなたたちの勇気をたたえるでしょう」と言った。それから私たちは良く働き、やがて私のお腹が大きくなった。最初は男の子が生まれ、次に女の子が生まれた。私の身の上に起こったことを子供たちに聞かせ、「何をするにしても、周囲を確認してから荷物を運ぶものだぞ」と言い聞かせた。男の子は山を一緒に歩き回り、私は女の子に女性の仕事を教えた。そして私たちは年老いたので、話すのですとオタスッの女性、ニパが語った。



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