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4. 金色の柄杓、銀色の柄杓(トゥノヤケ)

話 者:織田ステノ
資料番号:30008
収録日:1980年2月23日
「私」:村を司る神
登場人物:村を司る神、カケスの首領、偉大なキツネの神、チャクチャク鳴く鳥の神、沖のシャチの神、シカを司る神
翻 訳:北原次郎太
サンプル音声

<あらすじ>

 私は人間の村を守るために、天から遣わされた神です。村の水源の大きな山の上に板作りの家を建て、そこに落ち着いて人間界を見渡すと、人間達は何事もなく暮らしていました。人間達は祭りごとがあると、並み居る神々の中でも一番はじめに私を祭りました。嬉しくて、他の神々に向って「人間達をしっかり守ってやりなさい。そうすればこんな風に尊敬されるのだよ」と言い聞かせていました。

 ある年、いつものように刀の鞘に彫刻をしていると、窓の所に雄弁なカケスの神が来て「貴方は人間に祭られて偉い神になっているのに、人間界に飢饉が起きて死にかかっているのを知らないのですか?」と私を散々になじりました。驚いたけれども構わないでいると、カケスの男は怒って帰って行きました。また、彫刻にのめり込んでいると、キツネの大神が窓の所に来て「偉い神ともあろうものが、人間界に飢饉が起きて死に掛けているのに、のん気に何をしているのだ」と私を叱り付けました。驚きながらも聞こえないふりをしているとキツネの神は怒って去ってしまいました。こんどはチャクチャクと鳴く鳥の神が来て、私を叱り付けました。「まったく、口の立つ者ばかり酷い事を言って」と思いながら、人間の世界を見てみると、本当に静まり返っています。

 ほんの2、3日目を離しただけだと思ったのに、何者が悪戯して飢饉などになったのでしょう。あわてて銀と金の柄杓を取り出して懐に入れて村のほうへ飛んでいきました。村の様子を見ると、哀れさと怒りで胸がいっぱいになったので、西へ飛んでいって銀の柄杓で海を汲み取り、金の柄杓で東の海をみな汲み取ってしまって家に帰りました。人間界を見てみると、海が干上がり海にいる生き物たちが陽射しに焼かれてもがいています。沖のシャチの神が息も絶え絶えに、泣きながら「重い神様、私が悪かったのです。人間達に魚を授けますから海を元通りにして下さい。」と言って私に向って礼拝をしました。しかし私は腹が立っていたのでそっぽを向いていました。シカの神も懲らしめようと思ったところ、シカの神も人間にシカを与えたので、山いっぱいにシカが群れていました。私はまだ腹が立っていましたが、シャチの神が必死に頼むので、浜へ行って柄杓の中身をあけると、海が元通りになりました。シャチの神もそれで元気になり、沢や川に魚を送り込みました。そこで私は人間達に夢を見せてシカや魚が元に戻ったことを知らせてやりました。

 人間達はほとんどが死んでしまいましたが、わずかな人々が生き残りました。それからはまた、かつてのように私を敬っているのだ、という村を司る神の話です。



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