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2. 山の端の神が人間の女性を好きになり人殺しをする話

話 者:織田ステノ
資料番号:30006
収録日:1980年2月22日
「私」:ある村のニ
翻 訳:高橋靖以
サンプル音声

<あらすじ>

 私は父親と母親と暮していた。山に行ってシカでもクマでもとって年長者を養っていた。村の人はたくさんいて、よい女性もたくさんいたが、私は独身でいた。村の人たちは私を責めたが、私は妻をもたずにいた。

 聞くところによると、イアルモイサの村の村長に一人娘がいるが、婿をとると一晩でその婿たちが殺されてしまい、どうして殺されてしまうのかその娘もわからず、年長者もわからずにいるという。村人たちは「その噂があるところへ決して行くな」と言い、私も行こうと思わずにいたが、ある日突然イアルモイサの村へ行きたくなった。

 そこで「狩小屋をたてるので二、三日帰りませんから留守番をしていてください」と言って、山に行き川を溯って、途中から東の方へ山を横切り、イアルモイサへ下った。村の真中の家の外に着いて咳払いをした。すると神の様な娘が出て来て私を見るとすぐに引っ込んでしまった。「この家が噂に聞いていたところか」と思いながらいると、「座をととのえて招き入れなさい」と年長者たちが言った。私は家の中に入って見ると、私の父母より若いおじさんとおばさんがいて、頬に涙のあとがついていた。そして土間には大きな犬がいて私をにらみつけた。私は驚きながら座ると、おじさんは「どこから来たのですか」とたずねるので、「婿が一晩で殺されるという噂を聞いてどうしてかと思い訪ねてきました」と私は言った。そのおじさんは「私たちは年老いたので、婿をむかえても一晩で殺される。何が人を殺すのかわからない。娘もわからない。人々は恐れて訪ねてくる人もいない。若いニパが訪ねてくれたので、泊まってください」と言った。私は「この犬の仕業ではないか」と思い「今晩ここに泊まると、悪神がわたしにとびかかってくるだろうから、守護してください」と神に祈った。そして娘は神窓の下に寝床をつくり、私は刀を傍に置いて横になった。家の人も横になった。

 すると、その犬が土間から飛び跳ねてきたので、私は刀で心臓を突いた。そして外に引きずっていってごみ捨て場で切り刻み土とともに叩いた。その悪神を下界(ポナモシ)へ追いやって私は安心した。年長者たちは「若いニパのおかげで助かった」と言い、神に伝言した。私も家の中に入って火の神に抗議した。

 それからまた横になったところ、まさか眠ろうとは思わなかったのに、眠ったところ、みすぼらしいアチャポが出て来て次のように言った。「若者よ、話すから聞きてくれ。私は山の端の神だ。神のところでは気に入った女性がいないので、人間の世界を見て、この村の村長の娘が好きになった。犬の姿となっていると、村長が婿をとりたがるのに腹をたて、娘と年長者が寝ている間に婿を殺していたのだ。この娘を連れて行こうとすると、神々が怒るので、娘を連れていかないでいた。今は神から処罰されて、悪神の世界であなたが私を追いやった。これからはこのような悪さはしない。固いイナウ固い酒粕で私を祭ってくれれば、おまえを守護し、たくさん子供も生まれる。この娘と一緒になったら、おまえたちを私は守護しよう。聞いてくれ。」

 私はひどく腹をたてながら起きると、村長も同じ夢を見たらしく、起きて火の神に抗議した。そして「悪いものがほかにいると恐ろしい。言ったとおりにしよう」と言って、固いイナウ固い酒粕で悪神の後を祭った。

 その村長はクマの毛皮シカの毛皮はたくさんあるが、もう年老いて交易に行くこともできない」と言うので、「それならば」と私は言って交易に出かけた。和人の殿方の村に上陸し、年長者のかわりに交易に来たことを告げた。一日か二日滞在して戻ろうと思い、舟に酒や食料、タバコ、着物などを積み込み、村の船着き場に戻った。それから村の人々が集まり、祈りの儀式をした。それから私は自分の村へ戻り事情を話すと、父母は怒りながらも私をねぎらった。それから村長の娘が妻となるべく人々とともにやって来た。人々は一晩泊まった後で帰り、その後で父母は娘に感謝の言葉を述べた。私は山に行ってクマでもシカでも運んだ。私の奥さんも働き者で何の心配もせずに暮した。それから男の子が生まれた後、父母が亡くなった。その後も子供を可愛がって暮した。村人たちや子供たちに「犬はよく目を見て姿を見てから飼うのだぞ」と言い聞かせ年老いたので話すのです、とどこかのニパが語った。



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