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物語や歌

C226. 木彫りのオオカミ

あらすじ

 

 私は石狩川筋に住む若い男でした。父は私をとても可愛がって、狩りについて行き、父の手伝いをしていました。自分の弓で獲物をとるようになると、父以上に獲物がとれ、クマをとって来ると父はとても喜びました。そのうちに私はひとりで狩りに行くようになり、父は家で皮張りや干し肉作りなどをするようになりました。
 何不自由ない暮らしをしていましたが、ある日石狩川をさかのぼって行ってみたくなりました。そこでひとりで矢筒だけを背負い、舟で川をさかのぼって行きました。すると村が見えたので舟を陸に上げて歩いて行きました。村長の家の外には祭壇があり、古いクマの頭骨はあるのですが新しいものはなく、あまりきれいにしていないところが気にかかりましたが、来意を告げる咳払いをしました。すると年配の女性が出て来たのですが、何か心配事があるようで、泣きはらしてまぶたが腫れていました。家に入り「見たこともない男性が来ています」と家の人に告げると、老人の声で「暮らしぶりは悪いが、入ってもらいなさい」という声が聞こえました。家に招き入れられると、老人は真の長者のようですが、何か悩み事があるように見えました。
 家の中には若夫婦の寝床があり、老人が「息子よ、起きて若者同士話をしたらいい」と声をかけると、立派な若い男が出て来て挨拶を交わし、一緒に食事をしましたが、若者はあまり話をせずにすぐ寝床に戻ってしまいました。それから眠りにつきましたが、眠れずに夜明け近くになるとまた石狩川をさかのぼって行ってみたくなりました。そこでまた川をさかのぼって行くと、きれいな沢がありました。その沢伝いに進んで行くと、水源のくぼ地の、まさかこんなところにという場所に家が建っていました。その家から水汲み場まで人が歩いた形跡があり、水汲み場には犬が踏み荒らしたような足跡がありました。でも私に吠えかかる様子もありません。あたりを見渡すと、赤ん坊がよちよちと歩き、私を見ると家の中に入って行きました。そこで私も家に入ると、先ほどの赤ん坊を抱いて泣いているとても美しい若い女性がいました。私が持って来た食べ物を出すと料理してくれたので一緒に食べました。そしてどうしてここにいるのかと尋ねると、このように話してくれました。

 「私は石狩川筋でふたりの兄と暮らしていました。石狩の上流の村に嫁いで、そこの家族に可愛がられて暮らしていました。妊娠するとなお大事にされましたが、薪とりだけは私がやっていました。ある時、養父が『薪をとる場所を教えてあげよう』と言うので一緒に山へ行くと、ここに置き去りにされてしまいました。それからは毎晩、山からクマが叫び声をあげて下りて来ます。するとどこからか犬が飛び出して来て、クマとからみあって戦う声が聞こえていました。そのうちに息子が生まれてここで暮らしていたのですが、いつかは殺されてしまうと思って泣いていました」。
 この女性はもしかして昨夜泊った村長の家の嫁ではないかと思い、その夜はそこに泊ることにしました。すると本当に夜中になると山の方からクマが下りて来る声がしました。すると家の隅から犬が飛び出し、クマと戦う声が夜通し聞こえていました。夜が明けると声がしなくなったので、矢筒を持って外に出てクマの足跡を追って行きました。すると途中に木彫りのオオカミが落ちていました。それを拾って拝礼をし、懐に入れてまたクマを追って行きました。山へ行くと、倒木の下にクマが逃げ込んだ足跡があったので、クマがいそうな場所めがけて矢を放つと、命中してクマは死にました。見るととても偉いクマの神であることがわかり、拝礼をしてこのように祈りました。「何かあったのか、夢で教えてください」と言って、クマのかたわらに木幣を立てて女性の家に帰り、木彫りのオオカミを女性に渡してまた泊りました。すると夢に神のような立派な若者が現れてこのように言いました。
 「お若い方、私はクマ神の中でも一番偉い神の末息子なのです。この人間の女性を好きになり、嫁いでからも自分のものにしたくて、義父にこの家を作らせてそこへ置き去りにさせたのです。そして毎晩女性のもとに下りて行きましたが、木彫りのオオカミに阻まれていました。そのうちに父神たちにことが知られ、私は叱られたうえにあなたに殺され、家にも帰れずにいるのです。女性のことはもうあきらめましたから、どうか私が神の国へ帰れるようにしてください」。
 私はクマ神をあわれに思い、翌日には女性とその息子を連れて女性の嫁ぎ先の家に行きました。そして再会を喜び合い、私はクマ神の仕業であることを家族に告げると、義父は大変後悔していました。そしてクマ神を里に下ろして祭ろうという私を考えに賛成し、翌日人手をくり出してクマ神を下ろし、儀式ではこのように祈りました。「このクマ神も反省していることですし、神でも人間でも恋をするものです。これからはクマ神同士で一緒になってください」。
 その夜、夢にあの若者が散髪した姿で現れてお礼を言い、「これからも私を祈ってくれたならば、いつまでも守ってあげましょう」と言うので、起きてからその家の人たちは私に感謝しました。
 それから家に帰ると、何日も家を空けていたので父に叱られましたが、事情を話すと喜んでくれました。そのうちにあの女性の旦那さんが訪ねて来て、家同士のつきあいをしながら私も結婚し、子供もたくさんできたので「石狩の中流の家族と仲良く、クマ神を祈りつつ暮らしなさい」と言い残して死んでいきますと、ひとりの男が物語りました。


 

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