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物語や歌

C204. 兄に妻子を奪われた弟が交易に来た息子と再会する

あらすじ

 

 私は父母と一緒に暮らしていました。父はまだそんなに年を取っているわけではないのに家にいて、私が狩りをして食糧をとって来ていました。もうひとりで何でもするようになったので、何の苦労もなく暮らしていました。でも母はなぜか泣きながら暮らしているのでした。
 村の人たちが交易に行くのをうらやましく思い、自分も行きたいと思っていましたが、父が許可してくれないので、交易に行く人たちをただうらやましく思っていました。

 ある時こっそりと交易に行く準備をし、ひとりで出かけて行きました。行った先の和人の町では、他の村人たちには馴染みの交易相手がいるのですが、私には誰もいません。歩いていると、和人の家来が私の手を引っ張り「誰も交易相手がいないのなら、私たちのところへどうぞ」と言うのでその屋敷に行きました。すると大変な歓迎を受け、2,3日逗留してたくさんのお土産をもらって帰途につきました。帰る途中、ある川の河口部で休むことにしました。舟をつなぐときれいな道があったので、俵と酒樽をひとつずつ抱えて歩いて行きました。するとだいぶ前に木を切ったり、人が歩いたりした跡がありました。そして小さい子供の足跡もあり、釣りをしたような跡がありました。不思議に思って進んで行くと、崩れかかった家があり、そこに髪が長く伸びて性別もわからないような子供が入って行くのが見えました。私もその家に入って行き「悪いことをしに来たのではありませんよ」とひとりごとを言いながら料理を作りました。そして「料理ができましたよ。食べませんか」と寝ていた人に声をかけると起き上がりました。いろりの前に這い出て来た様子を見ると、人間とは思えないような姿でした。髪やひげは伸び放題で、目の玉がないのでした。私は自分の素性を話し、あの子供もそばに来たので、一緒に食事をしました。その恐ろしい姿をした人には私が食べさせました。お酒も飲ませてあげると、とても喜びました。遠慮しながら、どうしてこのような山奥にいるのかと尋ねると、このように言いました。

 「私は石狩川の上流で、兄と隣同士で暮らしていました。兄は悪い心の持ち主で、妻を殴りつけて死なせ、ひとりっ子も死んでしまいました。私は兄を恐れて妻とふたりの子供、男の子と女の子を連れてここへ逃げて来たのですが、追いかけて来て妻を殴りつけ、妻と男の子を連れて行ってしまったのです。私が元気なうちは狩りをして、妻を失っても不自由のない暮らしをしていましたが、兄は何かの悪神に祈ったのでしょう。突然私の目が見えなくなり、目の玉が腐って落ちてしまったのです。それからは手探りで暮らし、娘が魚を捕って来るのを食べて暮らしていたのです。私が死んだ後娘はどうするのだろうと、そればかり考えて暮らしていましたが、あなたはどうしてここに来てくださったのですか」。
 話を聞いてとても気の毒に思いましたが、同時に思ったのは「どうして私の母は泣き暮らしているのか。父は何か悪い心を持っているのではないだろうか」ということでした。でも何も言わず「家に帰りますが、2,3日したらまた来ます」と言って、女の子に料理をしてお父さんに食べさせるようにと言って家に帰りました。

 家に帰って荷物を家に運び込んでも、行った先で見たものの話は父と母にはしませんでした。食事をしながら父に「若いときに何か悪いことをしなかったか」と聞くと「何もしていない」と言うので、髪の毛をつかみ「本当か。悪い神に祈ったりしなかったか」と言うと「私の悪事を甥っ子に知られてしまった」と言うので、ひどく殴りつけて殺し、外にひきずって行って草や土と一緒に刻んでしまいました。母に今までのことを話すと、泣いて着物や色々なものを持ち、翌日一緒にあの崩れた家を訪ねて行きました。そして母はあの目の見えない人に「旦那さま」と言って飛びつきました。父は「悪い兄に殺されてしまったと思っていたが、息子が私を探しに来てくれた」と言って喜びました。父と妹にきれいな着物を着せて、崩れかけた家は燃やし、父の手をひいて家に帰って来ました。そしてそれからは本当の家族と一緒に暮らし、母は泣かなくなりました。苦労をした家族を大切にして暮らし、気だてのいい嫁をもらって、母には楽をしてもらいました。妹も結婚し、孫を可愛がって暮らしていたけれど、父も母も苦労をしたので早くに死んでしまいました。立派なお葬式を出して、自分も年を取りました。子供たちには「決して悪い心を持つな」と言い残して死んでいくのですと、ひとりの男が物語りました。

 

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