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物語や歌

C111. いつの間にか子供ができ、置き去りにされた娘

あらすじ

 

 父と母がいて、兄がふたりと姉がいて、一番下の妹が私でした。父と母、兄たちは私を可愛がって暮らしていました。私が若い娘にまで成長すると、母と姉は布を出して来て私に針仕事を教えてくれました。やがて私は母や姉以上に針仕事が上手になり、私の縫ったものはひときわ光り輝いているように見えました。姉はひとりで畑仕事をして、私は母のそばで毎日針仕事をしたり、家の中で色々なことをしていました。畑にいったこともなく、母に色々なことを教えてもらいました。もう一人前の女性になった頃、何だかお腹が大きくなって疲れやすくなりました。母にいうと、私のお腹を触ってみて、父に何かをいうと父は驚き「一体どうしたことだ。外にも出さずに家で大事に育てて来た子だというのに」といいました。母も兄たちも驚いていましたが、私は普通に暮らしていました。ある日父は兄たちにこういいました。「おまえたちは明日になったら川を遡っていき、川の水源にある神の高い山に向かっていって、大きな川を遡っていくと山の中に平原がある。そこに大きな家を建てなさい」兄たちは突然のことで驚きましたが、翌日になって朝食を済ませると、父は姉に草を刈るように、兄たちに家を建てにいくように急かすので、みんな出かけていきました。その後で母は私の横に座り、針仕事をしながら「女性というものは子どもができると、しばらく炉の近くに来ることはできませんよ。子どものへその緒が取れてからはじめて炉の近くに来て、火に当たり、炊事もできるのだよ」と毎日のように私に言い聞かせました。それから2、 3日すると兄たちが帰って来て、家ができたというので、父は「明日になったらゴザや食べ物、儀式に使う漆器類を背負って新しく建てた家にいって、火だなも作って、ものが乾かせるようにして、家の中を生活できるようにしなさい」といって、兄たちはそれを承諾し、翌日またみんなで荷物を背負って出かけていき、夜には帰って来ました。「道も水汲み場も整備してきました」といって、一緒に食事をしました。父はまた兄、姉たちに「明日の朝、村のみんなが起きる前にまた早起きをしなさい」といって眠りにつきました。翌朝みんな早起きをして、兄は私に「おまえのお腹が大きくなって、ここで赤ん坊が生まれて村人に赤ん坊の声が聞こえてしまったら良くないので、川の上流に家を造ったのでそこで子どもを産んで育てたらいい。今日おまえを連れていくよ」というので驚きました。家を出て歩いたこともないのにそんなに遠くにまで行くというのが心配で、また自分に子どもができたとも思っていなくて、どこか体の具合でも悪いのかと思っていたので本当に驚きました。男の人を見たこともないのに一体どうして妊娠をしたのかわかりませんでした。父は私に「おまえが針仕事をして作ったものを持って、また生まれた子どもを包む布も持っていきなさい」といって、母や姉が向こうで食べる食糧の準備もしてくれ、兄たちと姉と一緒に出かけて行きました。神の山を目の前に見つつ、大きな川を遡っていくと、平原に大きな家が建っていました。その家に入ると兄たちは薪を運んで来てくれました。そして一緒に食事をして、兄が火の神様に私のことを祈ってくれてから、私をひとり置いていくのが心残りな様子で家に帰っていきました。その後でひとりで火の神に祈り、ぐっすり眠って翌朝起きて、あたりを散歩したりしながら何日か過ごしました。するとお腹が痛くなって、転げ回っているうちに男の赤ん坊が産まれました。見ると神のようなおもざしの子でした。母が、子どもが産まれた後はこうしなさいと教えてくれていたので、その通りにしました。病気だとばかり思っていたのに本当に子どもが産まれたので驚きました。男の人を見たこともなかったのに、もしかして何かの神様が私に子孫を授けたのではないかと思いました。子どもを可愛がって、へその緒が取れてから火のそばにいって色々なことをしました。兄さんや姉さんが何でも準備しておいてくれたので、何の不自由もありませんでした。寂しくてたまりませんでしたが、息子に慰められていました。息子は草が伸びるように成長し、兄たちが用意してくれた薪もなくなったので、息子に乳をやって寝かせてから自分で薪採りをしました。山菜採りもして、息子に食べさせて2年か3年暮らしました。息子は家のまわりを走り回るくらいに大きくなりました。
 (話者が息子に代わって)一体どうして自分が生まれたのかわからずに、人に会ったこともなく母とふたりで暮らしていました。母は泣いてばかりいて、私に「早く大きくなっておくれ」といっていました。もう薪採りもできるようになったけれど、外には恐ろしいものがいるよと母がいうので、あまり遠くには行かずにいました。ある日、母はたくさん料理をして「息子よたくさん食べて、母の話を聞きなさい。山を下りていくと、おまえのおじさんがふたり、おばさんがひとりいるのです。おじいさんやおばあさんは生きているかどうかわかりません。私は昨夜夢を見たのですが、悪い神が私に恋心を抱いて私を殺しに来るようです。おまえは隠れていて、母さんの悲鳴を聞いても決して泣かないで、声を出さないでいなさい」そして私に着物をたくさん着せて、私の手を取って戸口の隅(の柱の上?)に私を持ち上げて「ここで静かに隠れていなさい。2、3日したら、夢で知らせを受けたおじさんたちが来てくれるでしょう」といいました。「悪いものがやって来るのがわかっているのなら、ふたりで隠れていよう」といいましたが、母は「ふたりでいたら見つかってしまう。おまえがひとりでそこにいれば火の神、戸口の神から守ってもらえるのだよ。いう通りにしなさい」といいました。夜になると何かが山から下りて来る音がしました。戸口の上から下を見ると、なんとクマが2つも3つもくっついたような化け物グマが家に入って来たのでした。母が神に助けを求める声が聞こえましたが、その後は何の声もしなくなり、悪いクマが何かを食べている音がしました。恐ろしくて震えながら、でも母のいう通りに声を出さずに一晩中神に祈り続けました。悪いクマは何かを探しているようで、家の中を荒らしてまわり、夜が明ける前に外に出ていってしまいました。「母さんどうしたの、ここから下ろして。家に入りたい」といいましたが返事はありませんでした。明るくなってからあたりをうかがっても、何も来る様子はありません。そこで飛び降りて家に入ると、可哀想に母は悪いクマに食べられてしまって、ちぎれた着物が散らばっていました。転げ回って泣いているうちに日暮れが近くなって、どこからか人の声が聞こえて来ました。家にふたりのおじさんが入って来て私を抱きして泣きました。炊事をして私に食事をさせ「悪いクマを退治してから村に連れていってあげよう」といいました。食事の間にも母を想って泣いて泣いて、おじさんたちは母にも供物を供えて復讐を約束しました。その日はふたりのおじさんに挟まれて横になりましたが、眠ることはできませんでした。翌朝食事を済ませると、おじさんたちは「決してどこへも行かずに家で留守番をしていなさい」といって出かけていきました。そして陽が傾いた頃に山から帰って来て、悪いクマを退治し、地下の冥府に落として来たことを神に報告しました。翌日年下のおじが私を背負い、年上のおじが漆器のいいものを背負い、家に火をはなって燃やしました。決して後ろを振り向くなといわれ、母の村まで下りて来ました。大きな家の中に入っていくと、年老いたおじいさんおばあさんがいて、その間に座りました。おばさんもやって来て、私を抱きしめました。それからその家で暮らし、おじさんたちと一緒に山猟にいくくらいにまで成長しました。魚捕りも教わって、おじさんたち以上に狩りが上手になりました。年下のおじさんは別に家を建てて、お嫁さんをもらってそこで暮らしました。おばさんも立派な旦那さんと一緒になって暮らしました。そして年上のおじさんは私に「私の甥よ、おまえは神の子孫なのだから、この家で祖父の家系を継いでおくれ。私はこの家を出て、別に家を建てることにするから」というのでひとりになるのは寂しいといったけれど、お嫁さんを世話してやるからといってみんな別々に所帯を持って住むことになりました。やがておじさんたちが連れて来た女性は母に似たおもざしの神のように美しい娘で、その娘と一緒に暮らすようになりました。山猟にいくとクマでもシカでも捕って来るので何不自由ない暮らしをすることができました。先に男の子が生まれたので、母の苦労を偲んで泣きました。次々に子宝に恵まれ、子どもたちに色々なことを教えて暮らし、母のことをいつまでも忘れずに泣きながら暮らして死んでいきますとオタスツの村長が物語りました。

 

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