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物語や歌

C033. 犬と育てられた末弟

あらすじ

 

 どうして自分が生まれたのかわかりませんでしたが、家には祖父母と父母、そして兄と姉が6人ずついました。そして私だけは犬と一緒に物置の隅で育てられていました。家族が骨を私の上の投げると、犬たちは私を踏みつけて喧嘩をし、骨を取り合いました。私も骨をかじりながら暮らしていましたが、一番下の姉と兄だけは、こっそり食べ物を懐に入れて外に出て来て私にくれるので、それを食べていました。
 少し大きくなると、薪採りをするようになりましたが、私がいい薪を採って来ると家族は私を叩いていじめました。悪い薪を採って来ると喜びました。私がいじめられると、一番下の姉と兄だけはなぐさめてくれましたが、山猟にいくときも、行きたいといっても「貧乏人の子は狩りには行けないんだよ」とっいて、決して連れていってはくれませんでした。
 もう若者といえるくらいに大きくなると、一番下の姉と兄はこのようにいいました。「父さんや母さん、村の人たちが話し合っているのを聞くと、おまえはどこか遠くに連れて行かれてしまうのだという。おまえの父が祈っていた神がいるだろうから、どこにいったとしてもその神に祈りなさい」そしてふたりは私を撫でさすりました。
 ある時酒をたくさん造り、女たちは毎日杵搗きをして、酒宴の準備をしているようでした。村人たちが家に集まって来て、儀式の前に唄ったり踊ったりしていましたが「貧乏人の子も家に入って食事をしなさい」といわれたので家に入ると、犬用の粗末な椀に、何か汁物を入れてくれ、それを食べると本当に美味しいのでした。家の主人に「明日、おまえを交易に連れていくから」といわれ、その後また物置で寝ていると、一番下の姉と兄が泣きながら来て「良いことをしにおまえを連れていくのではないのだ。おまえは神の子孫なのだから、神を背後に憑けて何とか生き残っておくれ」といいました。
 翌日私は父に交易にいくために浜に連れていかれました。海に舟を漕ぎだすと、一番下の姉と兄は、浜に出ていつまでも私のことを見送ってくれていました。夜も昼も舟で進んでいって、どのあたりであろうか、神の山がそびえていて、その山の下にある砂浜の入り江に父は舟をつけました。「ここに上陸して休もう」と父がいうので砂浜にあがって休んでいると、父はすぐに舟に乗って海へ漕ぎ出し、私を置き去りにしていってしまいました。私は心細さに大泣きをし、一番下の兄や姉を呼んで泣き叫んでいるうちに陽が暮れてきました。
 すると山の上から年寄りの男性が降りて来ました。私を抱きしめて「かわいそうに、おまえが捨てられてしまった様子を見て来たのだよ。一緒に行こう」といって、その年寄りは先に山を登り始めました。私はついていって、途中で道が悪いところがあるとその老人が私を背負い、頂上まで登っていきました。そこにはきれいな平原があり、家が建っていました。家にはおばあさんがいて、海の食べ物を料理してくれたので、たくさん食べました。それからその家で暮らし、何年か経って私は一人前の男にまで成長しました。
 もう何でも一人前にできるようになったので、おじいさんはこのようにいいました。「おまえの本当の父はオタスツの村長で、おまえをここに捨てていった男はその居候だったのだ。おまえの父はおまえを立派に育てるように居候に頼んで死んでしまったのだが、居候には6人の息子と娘ができたので、おまえの出生をねたみ、貧乏人の子としておまえを育てたのだ。しかし神は目の見えないわけではない。おまえの父が祈っていた神々がおまえを守っていたので、おまえは今まで無事でいられたのだ。私は海を司る老神である。おまえはこれから居候の悪者たちの村にいって、悪いものたちを罰して来なさい。心がけのいいものは殺さずに仲間にしなさい」。
 そしておばあさんが肌着を出して来て「この肌着の中に座って、どんな音がしてもじっとしていると、やがておまえの村に着くことができるのだよ」といいました。肌着の口を開けて中に入ると、肌着は浮き上がって神窓から外に出て、雲の上まで飛び上がって海の上を飛んでいきました。海鳥が歌を唄う声を聞きながら飛んでいき、見知らぬ村の上を通りかかると、村人たちが恐がって家を飛び出して隠れる様子を見ました。やがて私の住んでいた村に着くと、村人たちは噂を聞いたのか、逃げてしまって誰もいないようでした。私の住んでいた家に着くと肌着はひとりでに着陸してはらりと下に落ちました。
 家に入っていくと、一番下の姉さんと兄さんだけは、寝所で隠れていたのでした。村人たちがどこにいったのかと訊くと、山に逃げていったというので、そこに行って悪い者たちをみんな殺してしまいました。良い人たちは殺さずに、一番下の姉と兄のところに戻り、今までのいきさつを語りました。そして自分はまた戻って来るからといって姉たちに留守番を頼み、また肌着の中に入っておじいさん、おばあさんのところに帰って来たところ、ふたりは喜んで迎えてくれました。そしておじいさんがいうには、自分たちはもう何の心配もなくなったから天に帰るので、酒が手に入ったら自分たちを祈るように、そうすればいつまでもおまえたちを守ってあげようといいました。そしておじいさんが私の村まで私を背負って来て、おじいさんは膝まで海に入って、私を置いて天の国に帰っていきました。
 それからは村人たちを守って暮らし、どこからか本当の淑女がやって来たので結婚し、子どもがたくさんできました。酒が手に入ると儀式をして、海の老神に必ず祈るようにと教えました。一番下の姉と兄もそれぞれ結婚し、私は村人を守って暮らしていますと、ある村の旦那さんが物語りました。

 

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