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物語や歌

C003. 飢饉を見逃したキツネ神

あらすじ


 私は人間の世界を守るために天界から降り、神山の頂に座していました。人間界を見渡すと、男たちは狩りに、女たちは畑仕事に精を出し、平穏に暮らしていました。秋になると人間たちは祈りを行い、最初の酒杯、最初のイナウを私に捧げ、感謝の言葉を述べて大切にしてくれます。そこで他の神々を招いては「人間をよく守ってやれば、こうして人間からも敬われるのだ」と言い聞かせていました。

 そのうち、ちょっと何かの用事で忙しく、人間界から目を離していました。すると、ある日チャクチャク鳴く鳥の神が神窓の所へ来て、上手へ下手へ跳ねとびながら「偉大な神よ、貴方は人間に祭られたおかげで神格を高めていながら、人間界に病気が流行ってみな死に絶えてしまったというのにいったい何をしているのです!!」と騒ぎ立てた。

 「まさか」と思ってまた用事を足していると、今度はカケスの神がやってきて、窓のところで「偉大な神よ、何をしているんですか!!」と騒ぎ立てた。

 「まったく、偉い神たちは何を気にしているのだ」と思いながら人間界を見渡すと、なんと本当に家々からは煙も昇ってない。「人間の旦那たちは流行病で死に絶えてしまった」と聞いていたが、本気にしないでいたら、大変なことになってしまった。「私は何のためにここにいるのだ」と思って泣きながら、山を降り、人間界を去ろうと決めた。浜の草原に体を投げ出し、両手で地面を叩いた。草を集めて20人ずつの男女と大きな弁財船を作った。泣きながら船に乗り込み「さあ、東へ向かおう」と言った。女たちは輪唱をし、男たちは歌を歌い、風を切って進んだ。

 人間たちを悼んで泣いていると、私の召し人たちがいい土地に船をつけたのでそこで暮らすことにした。女たちが船を降りて仕事を始めると、その辺りに住んでいる人々が来て「ここにこれ以上人が住んでは狭くなる」といって私たちをひどく追い立てた。

 泣きながら船のなかで塞ぎ込んでいると、また女たちは輪唱し男たちは歌いながら船を走らせた。船の音を聞きながらなおも泣いていると、どこかに船が上がった。「旦那さま、起きてご覧ください。日が昇るところまで来ましたよ。もうこれ以上は行けません。いつまでも泣いておられては皆どうしてよいかわかりません。」というので見てみると、本当に日が昇る所まで来ていた。すると女神が出てきて「あなたが世を去ろうとしているのを見ていました。狭い所ですが、ここにいても結構ですよ。人間界を見たくなったらお連れしましょう」というので、拝礼した。それから、召し人達が大きな家を造り、そこで2、3カ月過ごした。

 あるとき、女神が私を連れだした。人間界を見てみると、わずかだが煙が立ち昇っているので安心した。それからも女神のそばに住み、年に2、3度人間界の様子を見に行った。という、偉大な狐の神が人間を悼んで泣きながら往来したという神謡だ。

 

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