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アイヌの歴史と文化アイヌの歴史と文化(概説)

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・PDF版(A5判32頁)

歌と踊り

 アイヌの伝統的な歌や踊りは、人々の日常生活の中で受け継がれてきました。儀式の時に演じられるものや、労働の時に歌うもの、娯楽として歌ったり踊ったりするものなど、種類はさまざまですが、いずれも、専門的な作曲家や舞踊家によって作られたり、演じられたりしたものではありませんでした。

 白老地方では、儀式や宴席で行われるものは、「ウポポ(座り歌)」と「リセ(踊り歌)」を基本としており、多くは集団で踊られます。

 ウポポは、女性が輪になって座り、漆塗りの器であるシントコ(行器=ほかい)のふたを叩いて調子をとりながら歌うものです。様々な踊りが始まる導入として、場の雰囲気を盛り上げる役目を持つとされます。

 リセは、踊りに合わせて歌われる歌とその踊りをいいますが、もともとは「ドシンと音をたてる」という意味です。村になにか変事があった時に、村人が隊列を組み、刀を上下にふりかざし、足を踏みならしなながら行進する悪魔払いの行進が、その元になっていると考えられています。

 たとえば、イオマンテ(クマの霊送り)では、神の旅立ちを祝い、儀礼の進行にともなって様々な踊りが踊られますが、さらに夜更けに及ぶ宴においては、場の盛り上がりとともに人々が次第に立ち上がり、大きな輪になって大勢で踊る「イオマンテリセ(熊の霊送りの踊り)」が始まります。

 「エムセ(刀の踊り)」も、魔を祓う目的で儀式の際に踊られるものだといいます。男性が力強く刀を振りかざし、勇ましいかけ声とともに、相対する者が刀を激しくぶつけ合ったり、ときには家の梁を叩いたりするもので、たいへん勇壮な踊りです。「クリセ」といわれる弓の踊りも、同じく男性によって踊られます。

 宴の余興として踊られるものに、輪になった女性が、お盆を回し合ったりして競う踊り「オッチケリセ(盆送りの踊り)」などがあります。

 このほか、鶴や雨ツバメなどの鳥や、キツネ、ウサギ、ネズミなど、動植物をモチーフとした踊りが、たくさんあります。

 このような踊りや歌は、現在の北海道の各地に伝承されており、地方ごとの特徴を持っています。

 近年、アイヌ文化復興の機運のなかで、伝統的芸能の保存会活動が活発に行われるようになっています。現在、これらの保存会のうち17団体の伝承する舞踊が、国の重要無形民俗文化財に指定されています。

ウポポ(座り歌)

イヨマンテリムセ(クマの霊送りの踊り)

エムシリムセ(剣の舞)

楽器

 一般に「ムックリ」と呼ばれる楽器があります。口琴という楽器の一種で、長さ10~15cmの薄い板片の中央に切り込まれた弁を振動させて音を出します。口にあてて、息を吸ったり吐いたり、あるいは口を広げたり狭めたりすることで、音色や響き方が様々に変化します。

 北海道では竹製、サハリンでは金属製のものが多くみられます。

 サハリンや北海道の一部では、「トンコリ」と呼ばれる弦楽器が伝わっています。弦の数が5本のものが多いことから、五弦琴とも呼ばれます。

江戸時代末期に記録されたアイヌの楽器の数々
(蝦夷漫画)

口承文芸

 文字を基本とするのではなく、語りそのものを楽しみ味わう文芸を、アイヌは育み発展させてきました。このような文芸は、口承文芸あるいは口頭文芸などと呼ばれます。広くみれば昔話や神話などのほか、歌謡、なぞなぞ、呪文、神への祈りの言葉、挨拶の口上なども含まれます。

 これまでは、それらのなかで、物語性が高い語り物についての研究が進んでおり、現在は大きく次ぎの三つに区分して考えられています。それぞれ、次のような特徴がみられます。

■英雄叙事詩

 短く繰り返されるメロディーにのせて物語が語られます。語り手ごとに独自のメロディーをもっているとされます。

 語り手は、木の棒で炉縁や自分の近くを叩きながら拍子をとります。長大な物語が多いとされ、数時間あるいはそれ以上かかるといわれます。

 物語の内容は様々ですが、超人的な少年英雄の冒険譚が多く、架空性・娯楽性が強いことも特徴の一つとされます。

■神謡

 短く繰り返されるメロディーに乗せて語られます。個々の物語に特有のメロディーがあり、サケヘとよばれる繰り返し言葉が挿入されます。数分から十数分の比較的短い物語が多いようですが、なかには1時間以上かかるものもあります。

 動植物や自然現象などの神々が、自分の体験を語るという形式が一般的です。

■散文説話

 メロディーをともなわず、散文で語られます。日常の会話に近いような口調で語られることが多いようですが、大きく抑揚をつける場合もあります。十分程度から数時間に及ぶ長大なものまで様々な物語があります。

 内容は多岐にわたります。ストーリー的には神謡と同じようなものもあります。勧善懲悪の結末が多く、倫理観や社会の規範を伝える役割も果たすといわれます。

サコロペを謡う
(『アイヌ風俗絵巻』市立函館図書館蔵)

 

北海道白老郡白老町若草町2丁目3番4号 一般財団法人アイヌ民族博物館

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