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アイヌの歴史と文化アイヌの歴史と文化(概説)

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信仰

 アイヌは、自然、動物、植物、道具など、人間をとりまくすべての事物に“魂”が宿っていると考えていました。

 そのなかでも、とりわけ人間に多くの恵みをもたらしてくれたり、人間がかなわないような強大な力を持つものを、神(カムイ)として敬いました。

 光と熱を与えてくれる火の神は、最も重要な神とされ、日常的に祈りが捧げられました。動物神の中では、クマやオオカミ、シマフクロウ、シャチなどが位の高い神として尊ばれました。そのほか水の神、大陽の神、月の神、雷の神、湖の神などの自然神、鍋、臼、舟などの物神など、多くの神々によって世界が構成されていると考えられていました。

 神は、神々の世界にいる時は、人間と同じ姿で同じような生活をしており、常に人間を見守っていると考えられていたようですが、人間世界に下りてくる時には、それぞれの衣装を身にまといます。すると、クマの神はクマの姿に、キツネの神はキツネに、樹木の神は樹木に変身するのだとされます。

 それらの神々は、人間を見守ってくれたり、食料をもたらしてくれますが、絶対的な存在というわけでもありませんでした。人間が神に祈り供物を捧げてきたにもかかわらず、なにか重大な事故が起きたような場合は、神の不注意によるものとして、厳重な抗議を行います。神が人間にとって役立ち感謝される存在であるのと同じく、人間も神にとって役立つ存在であるとされました。

 しかし、神々の中には悪神や魔神も存在するとされ、それらを祓うための呪術的な儀礼も行われました。疱瘡(天然痘)のような恐ろしい病気もまた、神であると考えられ、穏やかに通り過ぎることを願って、祈りが捧げられました。

 このような世界観に基づき、家を新築する際の儀礼、サケやシシャモの初漁に際しての儀礼など、数多くの儀礼が行われました。

 

子グマの神とヌサ(祭壇)

霊送り

 日用器具や祭具が古くなったり破損したりすると、それらを捨てる前に、感謝の言葉とともに道具の霊を神の国に送り返す儀式が行われました。これをイワテといいます。

 動物を捕った場合にも、その霊を送り返す儀式が行われます。たとえばクマの神は、暖かい毛皮、食料となる多くの肉、貴重な薬である熊の胆(くまのい)など、高価な土産を持参して人間世界を訪れますが、自分自身では、神の本体としての霊と、人間への土産としての肉体を分離することができません。人間がクマを手にかけることによってはじめて、霊と肉体が分離し、人間は土産を手に入れることができるのだと考えられました。人間はクマの神に深く感謝しつつ、その霊を神の国に送る儀式を行います。このように、狩りで仕留めた動物の霊を送ることを、一般にホプニレといいます。

 これに対し、育てた子グマの霊を、盛大な宴をもって神の国に送り返す儀式があり、これをイオマンテといいます。普通、クマは冬眠中に出産するため、冬の「穴熊猟」で雌グマを捕った際、子グマが残される場合があります。その子グマを、神として丁重に養育し、1、2年後に霊送りをします。

 イオマンテは、霊送りの儀式のなかでも特に重要な儀式とされ、近隣の集落からも大勢の人々が参集しました。仲間意識を高め、結束を強める役割も果たしたといわれます。

 クマのほかにシマフクロウのイオマンテも行われました。

 

文献史料にあるイオマンテ(『蝦夷島奇観』)

 

北海道白老郡白老町若草町2丁目3番4号 一般財団法人アイヌ民族博物館

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