V-21.饗宴と男たちの作業(性器・目玉の飾りつけとチタタプ作り)
祈りの際、上座に座っていた男たちが立ち上がり、ここを広くあける。ここで踊りがにぎやかにはじまる。前唄とともに男女一緒になって輪をつくる。上座に安置された神や供物、炉辺の古老たちを囲むようにして輪になり、白老伝統のリムセが舞われる。踊りは終わりがないほど長く、そして元気に楽しく踊られる。上座に座っている日川翁によれば、神もこの踊りを人間と一緒になって楽しむものだという。踊りが終わったら休憩し、みんなが適当にごちそうを食べたり酒を飲んだり、楽しく歓談し合う。
その間、男たちがチタタプ(citatap・一種のあえ物)をこしらえる。この料理だけは男たちだけでつくらなければならないとされる。チタタプの材料は熊の神の脳みそ、頬の肉、葱、それに味付け用の塩である。まず、頬の肉をあらかじめゆでておき、それをまな板の上でみじん切りにする。それに頭部の飾りつけの際に頭骨内から出した脳みそを入れ、さらにこまかく切った葱を混ぜ合わせ塩を加えてあえる。日川翁の話では、昔アイヌには葱がなかったのでメンピロ(mempiro・ノビル)を入れたものだという。このチタタプは量が少なく、しかも大事な食べ物なので、でき上がったら、これを入れ物を用いず箸でつまんで主だった人たち(古老や重要とされる男たち)の手の平に直接分配して、賞味してもらう。
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| 102 熊肉の鍋物(カムイオハウ) |
チタタプをこしらえる一方で、目玉や陰茎も熊神と一緒に送る準備を行なう。えぐり取ってイナウルの上に置いた目玉(眼球)をマキリの先で傷つけてから液晶を出し、これをイナウルでくるむ。日川翁によれば、熊だけでなくウサギでもキツネ・ムジナでも古来の方法で送るときはその目を「つぶらせる」ために傷をつけるという。2個の眼球ともイナウルをしっかりと巻きつけて球状にくるみ、これに長さ30~40cmほどのひもをつけておく。眼球は熊に元々ついていた通りの左右を決して間違わないようにして置かなければならない。また、水晶体をイナウルに包んで眼球部分に入れるイナウルと一緒に詰め込む。
さらに、この他に性器もイナウルでくるむ。まず、陰茎をイナウルに包み、その上を別のイナウルで巻きつける。こう丸も左右それぞれについていた位置を間違えないようにし、左右それぞれをイナウルに包んでその上をまたイナウルで巻く。陰茎の左右にこう丸を添え、これをイナウルで離れないようにしっかりと結んで固定させる。これにも長さ30~40cmほどのひもを輪状につけておく。
これらの作業のかたわら、男たち数人が胴体、手足の肉を切り分け、他の参集した人々全員に持って帰ってもらう分の肉を袋詰めする。
こうして以上の作業が終わると、また踊りがはじまる。「ウタリ ホプンパレワ リムセレヤン」という日川キヨ媼の音頭で女たちが一列になって上座側に進み、そのまま家の中一杯にぐるりと輪になって踊る。足を軽くステップさせながら両手で羽ばたくような仕草をする踊りで、白老ではなく道東地方に伝承されている踊りの一つである。後は、女たち、男たちによって歌や踊りが次々と展開されて行く。
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| 103 饗宴 |