V-10.団子撒き
熊の前での祈りが終了すると、パッチいっぱいに入った団子と少量のクルミが翁たちのところに運ばれてくる。日川翁が座ったままでそれを取り、熊の両側、後方に撒く。若者も手伝い多くの団子が撒かれる。日川翁によると、この団子・クルミを撒くことによって熊がこれを神の国に持って行くのだという。また、クルミは熊の好物で器用に割って食べるが、これも神の国に持って行く上等なみやげになるのだという。続いて、ポンヌサの前に座っている他の古老たちや女たちにも向かって撒く。座っている人々は競ってそれを拾う。
その間に若者2人が団子を一杯持って家の屋根に登り頂上に上がる。頂上から下に向かって次々と団子がばら撒かれる。家の東側(ヌサ側)や南側に景気よく撒かれる。この儀式に参加した人々、見学している人たちが「ここだ!ここだ!」といわんばかりに手を挙げ、撒かれた団子を歓声を上げながら拾い合う。
古老たちによれば、こうしてその場に居合わせた人たちが楽しく拾い合うことが大切なのだという。なぜなら、人間の喜び楽しみは神も喜び・楽しみとするものだというからである。しかも、分配された団子を仮に手にすることができない人間がいたとすれば、団子をいっぱい持って行った熊の神が神の国でそれを分配するとき、必ず手にすることのできない神がいることにもなるという。つまり、神と人間界は常に表裏一体の関係にあるゆえに、そのような現象が生ずるのだから、神に喜んでもらうためにも神々全員にそれが分配されるためにも人間は楽しく競って拾い合わなければならない、という論理なのである。
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本書および翌1990年に実施されたイヨマンテの実施報告書は、復刻合本として再刊されており、通信販売も可能です。
伝承事業報告書2〈イヨマンテ-日川善次郎翁の伝承による-〉
- 2002.11.30発行
- B5版294ページ
- 定価 2,625円
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