アイヌ民族博物館
 
 

トップアイヌ文化入門 イヨマンテV.本祭り >V-3.神窓から木幣を出しヌサに立てる(イナウアシ)

  巻頭
I
イオマンテの準備

II
酒漉し

III
家に祀る神の着物替え

IV
前夜祭

V
本祭り

1
火の神への祈り

2
対訳

3
神窓から木幣を出しヌサに立てる

4
ヌサとそこに祀る神々

5
ヌサの飾り

6
仔熊を遊ばせる

7
肉体と魂の遊離

8
熊の前での祈り

9
対訳

10
団子撒き

11
天に花矢を射る

12
熊の解体(イリ)

13
毛皮をたたむ

14
神窓から家の中に招き入れる

15
神を迎えての祈り

16
対訳

17
頭部の解体と化粧・飾りつけ

18
化粧・飾りつけられた神を安置しての祈り

19
対訳

20
対訳

21
饗宴と男たちの作業

22
飾られた熊神の送り

VI
祖霊祭

VII

終わりに
  奥付
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V-3.神窓から木幣を出しヌサに立てる(イナウアシ)

 祈りが終わってオンカミした後、男たち全員が戸口から出てヌサの前に行く。上座に置かれたイナウはロルンプヤの下に持って行かれ、ここから外に出される。まず、イナウケマ(inaw kema・イナウの脚)やストゥイナウ、ハシナウが出され、これらは一旦、外壁に立てかけて置かれる。
 男性数人で、ヌサに立てられてある古くなったストゥイナウ、ハシナウを間引いてそれをポンヌサ(pon nusa・小さなヌサ、白老ではヌサに向かって左側に小さなヌサをセットで作ることが多い。ここにヌサコカムイ・nusa kor kamuy=ヌサを司る神、これは穀物の神とされる)の前に置く。後、これに火をつけて別火とするのである。
 その後、ロルンプヤから次々とイナウが出される。家の中側にイナウを出す係の者がいる。その者のそばに酒の入ったパッチが置かれる。イナウを出す者は、イナウの帯(イナウの削りかけ全体を結んであるひも、ひもはイナウル)をほどいて、それを木の本体中央よりやや上に結び、削りかけ部分を持ってそれに酒をつける。次に酒がつけられた削りかけをねじるようにして、削りかけにつけた酒をイナウの頭にもつけてオンカミしながら出す。

62 神窓から木幣を出す

 外には男性が10数人ほどいて、まず、一人一本ずつイナウをオンカミしながら受け取り、窓の下でそれをイナウケマに結びつける。結ぶひもはシナの内皮である。これを一人一人ヌサに持って行って立てる。立てた後、すぐまた、チェホカケを受け取ってヌサに立てたイナウの左右に添えて立てる。ストゥイナウ、ハシナウもヌサに立てられる。今回は男性が多いので、老若問わず、ヌサに祀る神一神に対し一人ずつイナウを立て、その対象となる神の名前をしっかり覚えてもらった。当日の祈りの際、それぞれがその神々に酒を捧げ、自分の意志を伝えるためである。
 こうして、ロルンプヤからイナウを出し、外ではこれを脚に結んでヌサに立てることをイナウアシ(inaw asi・イナウが立つ)という。あるいはイナウセケ(inaw seske・イナウを接合させる)ともいう。

63 木幣を脚に結びつける


 新しい各種のイナウが立てられたところで、ヌサに横木を渡して左右の端をヌサの支え木に縛りつける。窓から花ゴザも出されヌサに張られる。ゴザを張る際にはひもを用いずミズキで作ったソラリ数本を用い、ちょうど針で縫うようにして止める。必ず串の頭を北側に向かせて止める。
 次に、ロルンプヤからトゥキとイクパスイが出され、窓越しにそれを受け取って窓の外で酒を注いでもらう。イナウを立てた男性たちが一個ずつそれを持ってヌサに行き、自分が立てたイナウに酒を捧げ、自らもその酒をいただく。日川翁によれば、アイヌ語ができないものでも「イナウ ウ カムイ タン イナウ サケ エウ ワ エンコレー」(inaw uk kamuy tan inaw sake e=uk wa en=kore、イナウを受け取る神様!このイナウをあなたが受け取って下さい)とだけを暗記していってもよいという。トゥキの中に余った酒はヌサケ(nusa kes・ヌサの下手、すなわち南側端)にあける。これを終えたら各自窓越しにトゥキとイクパスイを返却し、その後全員が再び家の中に入る。

61 ヌサに立てられた木幣に酒を捧げる

 

本書および翌1990年に実施されたイヨマンテの実施報告書は、復刻合本として再刊されており、通信販売も可能です。

伝承事業報告書2〈イヨマンテ-日川善次郎翁の伝承による-〉

  • 2002.11.30発行
  • B5版294ページ
  • 定価 2,625円

 

 


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