V-3.神窓から木幣を出しヌサに立てる(イナウアシ)
祈りが終わってオンカミした後、男たち全員が戸口から出てヌサの前に行く。上座に置かれたイナウはロルンプヤラの下に持って行かれ、ここから外に出される。まず、イナウケマ(inaw kema・イナウの脚)やストゥイナウ、ハシイナウが出され、これらは一旦、外壁に立てかけて置かれる。
男性数人で、ヌサに立てられてある古くなったストゥイナウ、ハシイナウを間引いてそれをポンヌサ(pon nusa・小さなヌサ、白老ではヌサに向かって左側に小さなヌサをセットで作ることが多い。ここにヌサコロカムイ・nusa kor kamuy=ヌサを司る神、これは穀物の神とされる)の前に置く。後、これに火をつけて別火とするのである。
その後、ロルンプヤラから次々とイナウが出される。家の中側にイナウを出す係の者がいる。その者のそばに酒の入ったパッチが置かれる。イナウを出す者は、イナウの帯(イナウの削りかけ全体を結んであるひも、ひもはイナウル)をほどいて、それを木の本体中央よりやや上に結び、削りかけ部分を持ってそれに酒をつける。次に酒がつけられた削りかけをねじるようにして、削りかけにつけた酒をイナウの頭にもつけてオンカミしながら出す。
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| 62 神窓から木幣を出す |
外には男性が10数人ほどいて、まず、一人一本ずつイナウをオンカミしながら受け取り、窓の下でそれをイナウケマに結びつける。結ぶひもはシナの内皮である。これを一人一人ヌサに持って行って立てる。立てた後、すぐまた、チェホロカケプを受け取ってヌサに立てたイナウの左右に添えて立てる。ストゥイナウ、ハシイナウもヌサに立てられる。今回は男性が多いので、老若問わず、ヌサに祀る神一神に対し一人ずつイナウを立て、その対象となる神の名前をしっかり覚えてもらった。当日の祈りの際、それぞれがその神々に酒を捧げ、自分の意志を伝えるためである。
こうして、ロルンプヤラからイナウを出し、外ではこれを脚に結んでヌサに立てることをイナウアシ(inaw as・イナウが立つ)という。あるいはイナウセシケ(inaw seske・イナウを接合させる)ともいう。
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| 63 木幣を脚に結びつける |
新しい各種のイナウが立てられたところで、ヌサに横木を渡して左右の端をヌサの支え木に縛りつける。窓から花ゴザも出されヌサに張られる。ゴザを張る際にはひもを用いずミズキで作ったソラリプ数本を用い、ちょうど針で縫うようにして止める。必ず串の頭を北側に向かせて止める。
次に、ロルンプヤラからトゥキとイクパスイが出され、窓越しにそれを受け取って窓の外で酒を注いでもらう。イナウを立てた男性たちが一個ずつそれを持ってヌサに行き、自分が立てたイナウに酒を捧げ、自らもその酒をいただく。日川翁によれば、アイヌ語ができないものでも「イナウ ウク カムイ タン イナウ サケ エウク ワ エンコレー」(inaw uk kamuy tan inaw sake e=uk wa en=kore、イナウを受け取る神様!このイナウをあなたが受け取って下さい)とだけを暗記していってもよいという。トゥキの中に余った酒はヌサケシ(nusa kes・ヌサの下手、すなわち南側端)にあける。これを終えたら各自窓越しにトゥキとイクパスイを返却し、その後全員が再び家の中に入る。
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| 61 ヌサに立てられた木幣に酒を捧げる |