アイヌ民族博物館
 
 

トップアイヌ文化入門 イヨマンテV.本祭り >V-1.火の神への祈り(カムイノミ)

  巻頭
I
イオマンテの準備

II
酒漉し

III
家に祀る神の着物替え

IV
前夜祭

V
本祭り

1
火の神への祈り

2
対訳

3
神窓から木幣を出しヌサに立てる

4
ヌサとそこに祀る神々

5
ヌサの飾り

6
仔熊を遊ばせる

7
肉体と魂の遊離

8
熊の前での祈り

9
対訳

10
団子撒き

11
天に花矢を射る

12
熊の解体(イリ)

13
毛皮をたたむ

14
神窓から家の中に招き入れる

15
神を迎えての祈り

16
対訳

17
頭部の解体と化粧・飾りつけ

18
化粧・飾りつけられた神を安置しての祈り

19
対訳

20
対訳

21
饗宴と男たちの作業

22
飾られた熊神の送り

VI
祖霊祭

VII

終わりに
  奥付
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V.イヨマンテ―本祭り―

V-1.火の神への祈り(カムイノミ)

 1月25日はイヨマンテの本番の日にあたる。この日に多くの儀礼が集約されている。これからは、まず、アペフチカムイ(ape huci kamuy・火の媼神)への祈りから開始され、続いて新しく作ったイナウをヌサに立てる作業が厳粛に行われる。
 朝、ヌサに立てるための新しいキケチノイェイナウ・キケパラセイナウ・チェホロカケプすべてをオッチケに載せて上座に置く。置く際には、炉の上座側に花ゴザを敷き、炉に一番近いところにキケチノイェイナウ・キケパラセイナウを満載したオッチケが3個並び、その後方にチェホロカケプを載せたオッチケ、チェホロカケプを載せたオッチケの隣り(シソ側)には、トゥキを載せたオッチケと酒が入ったエトゥヌプを載せたオッチケが置かれている。火の神への祈りの後、これらの木幣はロルンプヤラから外に出されヌサに新しく立てられるのである。
 シソに日川翁、その隣にもう一人の古老、向いのハラキソ側に二人の古老が座り、8時30分に祈りが開始された。一人の古老が酒漉しの際に炉縁に立てられたイヌムパストゥイナウ4本のうち、炉の下手側の2本を抜き、これを戸口のアパサムシカムイを祀っているところに持って行って壁に刺す。残る炉の上手側の2本のイヌンパストゥイナウも抜かれ、祭主・日川翁がこれを火の神にくべて捧げてしまう。
 座っている古老たちにトゥキが渡される。日川翁の「イオマレー!」(iomare・注ぎなさい!)という言葉で、イオマレクルが上座に置いてあるエトゥヌプを持ち、日川翁に左側から注ぐ。その間、日川翁は右手にキケウシパスイを持ってそれを軽く上下に振る動作をする(この仕草がトゥキに酒を注いでもらう際の道東地方の作法である)。イオマレクルはその後、隣の古老に注ぐ。続いて炉の下手側を通ってハラキソに行き、ここに座っている古老二人にも同じようにして注ぐ。注ぎ終わった後、エトゥヌプをイトムンプヤラ下に置き、イオマレクルが「イオマレピリカー!」(iomare pirka・イオマレがいいよー!すなわちイオマレが済みましたよ!という意味)という。このイオマレクルの合図で、日川翁が炉縁のチェホロカケプや炉の火の神に酒を捧げ、祈りが開始する。その祈りの間、日川翁の真向いに座っている一人の古老は同じく火の神に酒を捧げ、他の二人の古老は上座に置かれた諸々のイナウの頭から端にかけてまんべんなく酒を捧げる。この時の日川翁の祈りは、「火の神よ!昨日からずっと行なっている祈りですが、今からヌサにイナウを出します。若い者ばかりでございますので至らぬことがあっても、それは神々が彼らがまだ若い者だと考えになられ、怒らないで見守ってあげて下さい。イナウを出すこの祈りを年寄りの私が行なうのですから、よくよく見守って下さるようにお願いするのです・・・」という内容である(V-2を参照)。

59 本祭り-木幣を立てる前の祈り-


60 本祭り-木幣を立てる前の祈り-

 

本書および翌1990年に実施されたイヨマンテの実施報告書は、復刻合本として再刊されており、通信販売も可能です。

伝承事業報告書2〈イヨマンテ-日川善次郎翁の伝承による-〉

  • 2002.11.30発行
  • B5版294ページ
  • 定価 2,625円

 

 


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