II.酒漉し
II-1.火の神への祈り(カムイノミ)
イヨマンテの本番に入る前日の1月23日、昼の1時からこの儀式の主会場であるポロチセで酒漉しを行なった。まず、酒を醸造している樽をチセの上座側の南寄り、すなわちイトムンプヤラ(itomun puyar・南窓)付近に置く。
炉辺に日川翁が座り、同翁にトゥキ(tuki・杯)とイクパスイ(iku pasuy・酒棒箆)が渡され、女性によってトゥキに酒(この場合清酒)が注がれる。翁はそれをイクパスイの先につけて火の神に捧げ、祈り言葉を朗々と述べる。「育ての神、火の媼神・翁神よ、この豊かな白老の村にわたくしがきて、神の前で話すのですからよくお聞き下さい。わたくしどもが作った酒をこれから女たちがしぼるのでようく見守っていて下さい。今はもう昔のような年寄りがいなくなってしまったけれど、その数少ない年寄りであるわたくしがお願いするのです。」という祈りの内容である。(II-2を参照)。
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| 37 酒漉し前の祈り |
この祈り言葉を述べた後、翁は再びイクパスイで酒を火の神に捧げ、オンカミ(onkami・礼拝※)して自らもその酒をいただき、一旦この祈りを終了する。
※注 オンカミonkamiは男の礼儀作法の一つである。神に祈る際に、最初に両手の平を合掌させそれをゆっくり擦るようにしながら左右に2~3回軽く振り、その後両手の平を上に向け、胸からあご付近の高さまで両手の平を内側にローリングさせ、最後に右手であごのひげをさするようにする。また、トゥキを持って祈る際にもイクパスイをトゥキの上に載せ、両手でトゥキを持って同じように胸のあたりからあご付近まで2~3回ローリングさせ、その後、右手でイクパスイを持ってイクパスイを鼻下にあてるようにして酒を飲む。