I-16. 木幣及び関連用具
イヨマンテに際しては、ヌサ(nusa・祭壇)に飾る各種の木幣をはじめ、送る熊の頭骨を収める二叉の木、その他にも祈りの儀式に欠かせない多くの用具を新しく作る。これらを作る用材はおよそ10日間ほど前から調達し、本番の2、3日前から男たちの手で製作される。
今回は、前記した通り、事前に祭主である日川善次郎翁と協議した結果、ヌサに飾る木幣は当財団が伝承する白老地方の伝統的なタイプのものとし、木幣の対象となる神々についても基本的に当財団のポロチセのヌサで祀られてある通りとした。ただし、木幣のうち、ヌサに飾るチカプイナウ(cikap inaw・鳥すなわちここではフクロウの神の木幣)と、最終日に行なうシンヌラッパイナウ(sinnurappa inaw・祖霊祭の木幣)は日川翁自らの手で製作した。その呼称も日川翁の口述にもとづくものである。この木幣を製作しヌサに立てることは、古老たちの記憶や文献をみる限り白老地方には見られないものである。したがって、このようなチカプイナウとシンヌラッパイナウを除き、その他この儀式に用いる木幣や神の呼称・名称は白老地方に伝わるものである。
なお、日川翁の考えで、今回はヌサに立てるイナウすべてにイトクパ(itokpa・家に代々伝わる刻印)を入れることとした。これは日川翁自ら伝承するイトクパである。これをマキリで刻み入れた際にでた木片(木くず)をきちんとしまっておき、後、イヨマンテの本祭りの神への祈りの際、火の神に捧げるのである。
表2.祈りに使用する用具類の製作
 |
| 23 木幣(イナウ)に刻まれたイトクパ |
 |
| 24 木幣作り(イナウケ) |